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久米忠史のコラム

久米忠史のコラム

【vol.015】 久米忠史の奨学金コラム [2012.04.06]

奨学金滞納問題の問題

2012年3月17日 朝日新聞

~奨学金1万人滞納 金融・信販会社に登録~

日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金制度で、返還滞納者の個人信用情報機関への登録が1万件を超えたことがわかった。
金融機関や信販会社に情報が提供されるため、「ブラックリスト化」とも呼ばれる。 機構や大学から奨学金を受ける学生の割合も増えており、機構の調査で初めて5割を超えた。
機構は、2010年度末時点で123万1378人に総額1兆118億円を貸し出し、3カ月以上の滞納額は約2660億円に上る。
回収強化のため、10年度から3カ月以上の滞納者の情報を信用情報機関に登録し始めた。
一度登録されると、返し終えても5年間残り、クレジットカードや住宅ローンの利用が制限される可能性がある。 機構によると、10年度の登録件数は4469件、11年度は今年2月現在で5899件で計1万368件に達した。

私のもとにも平均すると、月に30件以上の相談が寄せられます。 正直なところ、その中には真面目に答える気がしないような無責任なものもありますが、最近、気になっているのが「返済」に関する相談内容です。

講演会でも「返済」に関する質問は多いのですが、メールで寄せられる相談に深刻なものが増えていることに危惧しています。 先に紹介した朝日の記事でも述べられていますが、日本学生支援機構では、2010年度から返済金の回収を強化しています。

3ヶ月以上の滞納でブラックリストに登録されるだけでなく、悪質な滞納と判断されると法的措置が取られるケースがあり、その件数は年々増えています。

私もメールや電話で、延滞金の一括支払いを求められたり、法的措置が取られる寸前の方とやり取りすることがありますが、私にはどうしても、その方たちが“悪質な人”とは思えないのです。その方たちは何とか返そうと思っている人たちです。

延滞金も含めて70万円もの一括返済を求められているある女性は、返す意思はあるので、分割返済にしてくれないかと相談したところ、 まず70万円の一括返済をしてからではないとその後の相談には応じられないとの対応をされ、途方に暮れて電話してきました。 悪評高いサラ金の社員でも、もっと血の通った対応をするのではないでしょうか。
あまりにも硬直化した悪い意味でのお役所的対応だと思います。

収入の低い彼女の場合、サラ金でもヤミ金でも70万円ものお金を借りることはできないでしょう。頼れる家族がいない彼女の場合は、一体どうすれば救われるのでしょうか。

私の知人にも、多くの人の借金を踏み倒した挙句、自己破産して現在も平気な顔をして暮らしている輩もいます。口が達者で、神経の図太い彼にしてみれば、他人に迷惑を掛けることなど大したことではないようです。

しかし、繊細で真面目で責任感の強い人ならば、最悪の道を選んでしまう可能性があるのではないかと心配です。“奨学金の返済金を苦にした自殺”。そんな悲劇が起こる前に今すぐに手を打つべきです。

「借りたものを返す」。これは当たり前のことです。 そういう意味では、奨学金の滞納者に第一の責任があることは間違いありません。 しかし、現行の奨学金制度側にも大きな問題点が存在していると感じています。

私が考える奨学金の返済に関する問題点を2つ挙げます。

①ブラックリストへの登録の廃止
現在、3ヶ月の滞納で、個人信用情報機関へ個人情報が登録されます。
一旦登録されると、全ての返済を終えても5年間は継続して登録されることになっています。 奨学金は最長20年間かけて返済することになるので、例えば、大学卒業後の返済初期に滞納した場合、47歳までブラックリストに掲載されることになります。
これでは、結婚して住宅ローンや子どもの教育資金の融資を受ける時に支障が出てくる可能性があります。
ある意味、2世代に渡って奨学金難民になってしまうかもしれません。

②返済の意思のある人には柔軟な対応をとる
延滞金も含めて一括返済しなければ、次のステップに進めない現行の制度はあまりにも硬直化し過ぎだと思います。 この仕組みのままでいくと、奨学金の返済金をきっかけにした多重債務者が生まれかねません。
人材育成のための教育であったはずなのに、それが個人を破綻させる原因となってしまうとすれば、日本は恥ずかしい国です。 そんなことまでアメリカの真似をしなくてもいいです。返済してもらうことが目的なのだから、制度側もその目的に沿った体制に作り直すべきだと考えます。

私は無責任で悪質な滞納者については、奨学生本人はもちろん、連帯保証人である親にも厳しく対応すべきでだと思います。その考えは一貫して変わりません。
しかし、返す意思があり、行動しようとしている人は大切にして欲しいと思います。また、きっとその方が、日本学生支援機構にとっても日本とってもメリットがあるはずです。

大学の無償化や給付制奨学金制度の創設などの実現性の乏しい極端な話よりも、これらは直ぐに手を付けることができる改革です。
奨学金は、借りてから返し終わるまで長い期間付き合っていかなくてはなりません。
それだけに、借りた人が奨学金に感謝できるような仕組み作りが大切だと考えます。

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