2014年07月04日
6月16日のブログで書きましたが、沖縄県が独自に給付型奨学金を創設することを表明しました。
琉球新報 2014年7月2日の記事より
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給付型奨学金を創設 県、県外大への進学支援
諸見里明県教育長は1日、県外大学へ進学する県出身学生を支援するため、返済義務のない「給付型」奨学金を創設する方向で検討していることを明らかにした。同日の県議会6月定例会で西銘純恵氏(共産)に答弁した。給付額や対象基準を今後検討し、早ければ2016年4月入学生から実施したい考え。教育庁教育支援課によると、都道府県による給付型奨学金の創設は全国的にも珍しい。
教育庁は本年度、有識者による「県外進学大学生奨学事業検討委員会」を立ち上げ、6月に第1回会合を開催した。諸見里教育長は「県外大学へ進学する学生を幅広く支援する観点から検討委員会を立ち上げた。12月をめどに、内容やスケジュールについて意見をとりまとめる」と述べた。
県はこれまで、東京や大阪など大都市圏に学生寮を整備するなどして県出身者の県外進学を支援してきた。しかし、近年、県出身学生の進学先が全国各地に広がっていることから、より多くの学生が支援を受けられる制度を求める声が有識者などから出ていた。
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2012年度に香川県が給付型奨学金を創設したところ100名の採用枠に800名以上もの応募があり話題になりました。
その後、いくつかの地方自治体でも独自に給付型奨学金を創設する動きが見え始めています。
自治体が独自に給付型奨学金を設ける背景には、日本学生支援機構の奨学金の返済が負担に感じる人が増えていることが影響していると思いますが、若者の人口流出など、それぞれの自治体が抱える問題対策のひとつの手段としても考えられているようです。
これまで10年近く沖縄県の高校で奨学金講演活動を続けてきたこともあり、今回の方針には興奮を覚える一方で、せっかく新たな制度を作るのであれば真の人材育成につながるものにして欲しい、と非常に冷静な気持ちで捉えている自分がいます。
高卒無業率、大卒無業率、学力など、多くの面で不名誉なランキングとなっている沖縄県ですが、学力の低さ学卒無業率の高さは、学生個人の資質に起因するのではなく、社会環境、生活習慣が大きく影響していることを実感しています。
文科省が毎年実施している小中学生の学力調査で、現在トップの秋田県も40年前は最下位近辺だったそうです。
そのことに危機感を持った秋田県では、スーパー授業を導入するのではなく、秋田大学の学生による補習サポートや家庭での復習・予習の習慣化に力を注いだ結果、現在の学力状況につながったとのこと。(秋田の子供はなぜ塾に行かずに成績がいいのか・浦野弘著)
毎年何度も東北地区で講演をさせて頂きますが、学力調査1位の秋田県や5位の青森県の保護者や生徒自身に“特別なことをしている”という自覚がないことに驚きを覚えます。
青森県は沖縄県と平均所得がほぼ同じで全国最低水準です。しかも気候など生活環境は沖縄よりもはるかに厳しいはずです。
先般、文科省から“親の所得が高い家庭の子どもほど学力が高い”という調査結果が公表されました。
朝日新聞記事「親の年収多いほど高い学力 文科省、初の全国調査」
関連ブログ記事「親が高収入・高学歴なほど子供の成績も高学力 ただし低所得でも規則正しい生活習慣で挽回可能」
可処分所得が多い家庭ほど余裕があるので、まあ当たり前といえば当たり前の結果ですよね。
個人の問題として捉えると確かに学力は家庭の収入と比例するかもしれませんが、地域全体で子どもたちの学力に対して問題意識を共有し努力することで乗り越えることができるのは先の秋田県や青森県の例で明らかだと思います。
今回の給付型奨学金の創設が、沖縄県全体の学力向上に向けた取り組みのきっかけになることを願っています。
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
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