2021年11月02日
「奨学金なるほど!相談所」のHPをご覧のみなさま、はじめまして。私は沖縄県那覇市で奨学金アドバイザーをしている福井と申します。この度は久米さんのご厚意により、特別にブログに寄稿させていただくことになりました。ご一読いただけると嬉しいです。私のHP 奨学金FP相談室 どうぞよろしくお願いいたします。
2021年10月末に衆議院議員の国政選挙がありました。各政党の学生向けの公約を見ていたら、「学費半額/入学金の撤廃/給付型奨学金の拡充」などの文言が並んでいました。財源はどうするのだろう?という疑問は横において、学びの環境が充実するのは結構なことです。
貸与型奨学金について、単純な疑問があります。
ご存じの通り、住宅ローンは借入残高の1%がその年の所得税や住民税から控除され、住宅購入者の大きなインセンティブになっています。その一方で、貸与型奨学金は利率が最大でも3%というメリットはあるものの、税制については残念ながら優遇措置はありません。「貸与型奨学金の本質は、学生向けローン」であるにも関わらずです。
大学4年間で第2種貸与型奨学金を最大限活用すると、以下の通りです。
月額12万円×12か月×4年間+50万円(入学時特別増額貸与奨学金)=626万円希望いっぱいに社会人生活をスタートする若者にとって、20年間の長期にわたりこの金額を利子付きで返還していくのは大きな負担です。
住宅ローンのように貸与型奨学金についても、本人が卒業して返還開始後、借入残高の1%が税額控除されれば大きな助けになるはずです。その年の所得や家族構成などに応じて控除額は変化するので、具体的な数字を示しにくいですが、期間を10年とすると合計で40万円~50万円程度になるのでないでしょうか。
多くの給与所得者は年末調整だけで確定申告はしません。ただし、住宅ローン減税を適用する最初の年は確定申告をします。私は長年のサラリーマン生活で「税金は年末調整で清算されるもの」という勝手なイメージがついてしまいました。反省するとともに、この仕組みは税に対する関心が薄くなりよくないことだと思います。
貸与奨学金を活用した人が早いステージから確定申告を行い、税に関心を持つことは健全であるべき姿だと思うのです。自分の納める税金がどのように決まり、いくら支払っているのか。また、納めた税金が何にいくら使われているのか、国民として認識すべきです。
2020年に始まった高等教育の修学支援制度は、低所得層向けの給付型奨学金の拡充策です。この施策の目的は「少子化対策」ですが、貸与型奨学金を活用した若者が重い奨学金返還に苦しんでしまうと、新しい家族を考えることをあきらめてしまうかもしれません。
住宅分野はその経済波及効果が高いことは理解できます。ただ、教育分野への投資は10年後の国の未来を決定づけます。今回の国政選挙における各政党の公約に「貸与型奨学金の税額控除創設」という文言がなかったのは寂しく感じます。
奨学金アドバイザー 福井 剛司
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
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