2014年07月31日
奨学金の返済システムに関して、ついに「所得連動返還制度」の導入の検討が始まったようです。
読売新聞WEB版 2014年7月29日の記事より
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奨学金返済額、所得で変動…滞納者多数で見直し
文部科学省の有識者会議は28日、大学生らに国が貸し付けた奨学金の返済について、毎月一定額ではなく、所得に応じて返済額を変える「所得連動返還型」を導入すべきだとする報告書案をまとめた。
卒業後の所得が低いことなどから滞納者が多数に上っており、連動型で少額でも返済していけるようにするのが狙い。
導入は、国民一人ひとりに固有の番号を割り振る共通番号(マイナンバー)制度で所得額を把握することが前提となる。マイナンバー制度が2016年1月開始を予定することから、文科省は17年度の新規貸与者からの導入を目指す。
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当ブログでも何度か紹介してきましたが、所得連動返還とは、現在のように一律の返済額ではなく現在の収入に応じて奨学金の返済額が決められるもので、イギリスやオーストラリアで導入されている方式です。
マイナンバー制度の導入議論が進む中で、奨学金関連の識者の間では考えられていた返済方法であり、僕自身も願っていました。個人的には思ったよりも早く検討されることになったと感じています。
その背景には、今回の有識者会議の座長を務める小林雅之先生の影響が大きかったのではないかと思います。
小林先生は奨学金研究の第一線で活躍され、数々の著書も書かれており、僕自身も影響を受けた方です。
日本学生支援機構の調べでは、現在奨学金滞納者は33万人を超え、滞納者の8割以上が年収300万円以下であることがわかっています。
所得連動返還は、収入の少ない人にとっては現実的な負担軽減策となります。
今回の報道を見て残念に思うのは、“2017年度の新規貸与者からの導入”という点です。
文科省や日本学生支援機構の立場からすると、これまでに法的措置を取った人との公平性が損なわれてしまう大きなリスクを抱えることになるでしょうが、現在滞納している人も含めて遡っての所得連動返還の適用に踏み込んで欲しいと思います。
所得連動返還の導入が、即奨学金利用者の不安解消にはならないでしょうが、金融事業から本来の奨学事業へと舵を戻した象徴的な転換点だと思います。
所得連動返還の次に求められるのは「債務の消滅期限」です。
イギリスやオーストラリアの所得連動返還、さらにはアメリカの学生ローンでも20~30年経つと債務自体が消滅する期限設定が設けられています。
一方、日本学生支援機構の奨学金は、本人が死亡または高度障害に陥らない限り返済が免除されません。
所得連動返還の議論が本格化すると同時に債務の消滅期限についても是非検討して頂きたいと思います。
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奨学金の返済利率「固定と見直し」どっちが得?
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
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