2014年09月29日
読売新聞教育部の責任編集による「大学の実力 2015」が発売されました。
「大学の実力」調査とは、2008年から読売新聞が独自に始めた取り組みで、全国約700の大学を対象に詳細なアンケート調査を行っているものです。
2015年版の最大の注目は、大学業界のタブーと言われ続けている「退学率」を公表したことです。
しかも、学部ごとではなく入試の種類別に入学後1年以内の中退者の詳細な数字を記しています。
予想していたこととは言え、AO入試での中退率が15.5%と最も高く、6人にひとりが進学して間もなく退学していることが判りました。
なかには中退率が40%の大学もあり、いかに進路のミスマッチが増えているか、その実態を垣間見ることができます。
進学後1年経たずに中退すれば、受験費用も含めて100万円以上のお金をドブに捨てたことになります。
奨学金を借りて進学していたならば、それは無駄な借金に終わってしまいます。ただ、見方を変えると、彼らは借金を最小限度に抑えたと言えるかもしれません。
もうひとつ気になったのが、本書では正規雇用での就職率を66%と算出している点です。2014年8月に発表された文部科学省の学校基本調査をもとに自分なりに計算したところ正規雇用での就職率が77.2%となりました。
本書が明らかにした数字と国が公式に発表した数字では実に11%以上もの開きがあります。
学校基本調査の調査対象が、一部の学校を抽出したものであって現実の姿を表していないということは以前から指摘されていましたが、この大学の実力のデータの方が正しければ、自分も含めてこれまで多くの教育関係者がミスリードしてきた可能性があります。
いずれにしても、高校の先生方は、大学進学率を単に上げるのではなく、卒業まで見据えた進路指導へと意識を高めて欲しいと思います。
生徒の進路選択に最も影響を与えるのが高校教員であることは、数々の調査で明らかです。
全国の高校教員には、ぜひ「大学の実力2015」を手に取って頂きたいと思います。
タイトル/大学の実力2015
価格/1512円(税込)
編著/読売新聞教育部
出版社/中央公論新社
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
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