2013年03月13日
前回のコラムにも書きましたが、所得に応じて返済額が決まる仕組みや一定期間を過ぎると奨学金債務が消滅するなど、新たな取り組みが必要であると考えています。
昨年度、日本学生支援機構では「所得連動返還」という新制度を導入しました。
しかしその実態は、不完全で中途半端な内容であり、むしろ不公平を拡大させるような仕組みとなっています。
「年収300万円以下の家庭の学生が第一種奨学金を利用している場合は、卒業後本人の年収が300万円を超えるまでは無期限に奨学金の返済を猶予する」
簡単に説明するとこのような内容です。
少し乱暴ですが、以下のケースを想定してみます。
A君 家庭の世帯年収290万円
B君 家庭の世帯年収310万円
普通に考えて生活水準はA家、B家ともに同じでしょう。
第一種奨学金を借りて大学を卒業したA君とB君は某企業に同期入社した。
しかし、入社した会社は給料は安く年収は200万円程度。
先輩の話を聞くと30代でようやく300万円を超える程度とのこと。
当然、A君もB君も生活に余裕がないので、日本学生支援機構に返還猶予を申請し認められた。
この時点で明らかに不公平が発生します。
A君→猶予期限は無期限
B君→猶予期限は最大5年間
B君は、6年目からはどれだけ生活苦しくても返済を開始しなければなりません。
一方、A君は年収が300万円を超えるまでは無期限に返済が猶予されます。
年収が低かった親に感謝するのか、少しだけ上回った親を恨むのか・・・・。
変な話だと思います。
さらにA君が専業主夫(婦)になり年収ゼロになったらどうなるのか?
おそらくマイナンバー制度の導入により世帯の収入を把握できるようになるので、専業主夫(婦)であっても世帯年収が上回ったら返済開始となると思います。しかし、専業主夫(婦)のパートナーも奨学金を借りていていたとすると、家計支持者ひとりの肩に夫婦二人分の返済が圧し掛かってくるので、一気に負担が大きくなるはずです。
このように僕が少し考えただけでも、問題点だらけで見切り発車した制度であることが分かります。
早晩、見直されることになるでしょう。
次回は、目指すべき「所得連動返済」奨学金制度創設に文部科学省が動き始めたニュースを紹介したいと思います。
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
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