2013年11月12日
僕の講演は、日本学生支援機構の「予約採用」の前後で内容が異なります。
大ざっぱに分けると、2月~6月までは「予約採用前のポイント編」、そして9月~11月は「予約採用後の実践編」となっています。
どちらも一生懸命に話しますが、どちらが重要かと言えば「実践編」だと個人的には思っています。
実践編では、“奨学金のおさらい”から、あまり知られていな“い奨学金制度の細かくはあるが重要な点”を解説しつつ、一番熱を入れて伝えたいのが大学から就職へ繋げるポイントです。
あたり前の話ですが、大学や専門学校は社会へ出るための通過点に過ぎません。
極端な言い方ですが、例え東大や京大などのトップの大学を卒業していても、社会で働き税金を納める立場にならなければ、全く意味が無いと考えています。
国立大学は国民の税金に依存する要素が大きいので、むしろ税金の無駄遣いと言ってもいいのかもしれません。
だからこそ、実践編では、奨学金のメリットとリスクに加えて、大卒フリーターにならないためのポイントを強調しています。
本日は、昭和薬科大学附属高校と那覇工業高校とのダブルヘッダーでした。
現在、全大学生の40%近くが日本学生支援機構の奨学金を利用しています。
利用していると言うと一見柔らかな言葉に聞こえますが、日本学生支援機構の奨学金は実質“学資ローン”であり、学生が背負う“借金”です。
偏差値の高低に関わらず、現在、多くの大学が奨学金という学生が背負う借金によって運営されていると言ってもいいでしょう。
大学の運営ということは、施設の維持管理費用だけでなく、大学の職員、教授陣の給料も当然含まれています。
今年の大学生の正社員就職率は75%程度です。
つまり25%、大学を卒業した4人に1人は就職できないか、非正規雇用の状況に陥っているのが現実です。
これが日本の大学生のリアルな姿です。
大学生の就職難はホントの話なのです。
しかし、多くの大学や専門学校のパンフレットでは、“就職率95%”などと現実とはかけ離れた数字が踊っています。信じられないことに、就職率100%や120%というあり得ない数字を打ち出す学校もあるのです。
このカラクリは簡単です。卒業生数ではなく、就職希望者数を分母にして就職実績を出すから前述のような俄かに信じられない数字が出てきます。
現在では、大学に限ってはパンフレットやHPでの情報公開が義務付けらています。
それらを見ていくと、就職率95%を謳っていても、実際の卒業生数の就職率を見ると70%台の大学がたくさんあることが分かります。
ただ、保護者や受験生がそこまで見抜く“情報リテラシー力”があるかと言えば、必ずしもそうでないようにも思っています。
進学費用については、利用者責任論で片付けられるものなのか?
このところ、高級ホテルの偽装問題がメディアで取り上げられています。
個人的にはマスコミの取り上げ方に疑問を持っていますが、車海老と思って食べたエビがブラックタイガーだからと言って腹を壊す人はいないでしょう。
だから、今回の問題は企業の行儀の問題だと思っています。
不思議なのが、偽装問題を起こしたホテルの多くは電鉄系が経営しており、ANAやJALなど航空系のホテルではそのような問題が発覚していないという点です。
少し横道に逸れましたが、大学や専門学校が謳う“就職率〇〇%”という表現は、明らかに偽装と指摘されても仕方ない問題であろうと考えています。
今、日本の高等教育の在り方が社会から問われ始めています。
就職希望者数に対する就職率を出すならば、卒業生数に対する就職率などのリアルな実態数を公表すべきです。
「就職率90%以上という数字はあり得ない」
講演では、いつも話をしています。
保護者は自分の子どもだけしか見ていません。
言い換えれば、他の子がどうあっても自分の子どもだけは大切にして欲しいと願う思い違いと言っていいでしょう。
本来、家庭の躾の範疇に収まるべきことが、高校現場側に押し付けられるケースが多くあるように思います。
今、大学や専門学校の募集担当者の苦労は大変だと想像できます。
正直、どうしょうもない学生や親でも受け入れざるを得ないことがあるでしょう。
しかし、“就職という出口”を本気で学校が意識した時には、高校生や保護者に対する接し方も変わってくるはずです。
教育家(か)と教育家(や)の違いは、天と地ほどの開きがあるように思っています。
自学の本当の情報を伝えると同時に、受験生、保護者にも厳しいことを要請する、このリアルな第一歩を踏み出すことこそが、大学や専門学校が将来生き残って行く為の道ではないかと思います。
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
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