奨学金なるほど!相談所

久米忠史の奨学金ブログ

2013年12月03日

なぜ、私立大学の学費は高いのか?

色々な批判もあるでしょうが、アベノミクスという言葉に多くの庶民が密かに期待を寄せているのが本音だろうと思います。

失われた20年などと、長く続いた不景気で家庭の収入は年々厳しくなっていますからね。

不思議なことにデフレ経済下で様々な価格が下落し続けた一方で、大学の学費は上昇カーブを描き続けました。

なぜ、大学の学費は上がり続けたのか?

専門的な言葉では、大学などの高等教育は“経験財”に分類されるようです。

経験財の特徴をひと言で述べると、「価格の高いものはそれだけ質が高く、価格の安いものはそれだけ質が低い」と思われる、錯覚される価値だと思ってください。

わかりやすい例えを出すと、受講料1000円のセミナーよりも5万円のセミナーの方が、より特別な知識や情報を得ることができる、と期待してしまいますよね。

つまり、そもそも学費というものは、大学自らが値下げするという方向に踏み出しづらい環境のものなのです。

実際、関西の某私立大学が、募集戦略の目玉として授業料の値下げを実施したところ、逆に翌年の受験生数が減少してしまったという話を聞いたことがあります。

現在、日本だけでなく、アメリカやイギリスでも高騰した大学の学費が社会問題となっています。そのため、給付奨学金の拡充や所得連動返還など、学生の負担を軽減する施策に各国が頭を悩ませているというのが実情のようです。

もうひとつの問題が学費の設定方法についてです。

あたり前の話ですが、どんな商品でも製造に掛かる原価や流通コストなどを基に販売価格を決定します。

しかし、大学の学費の設定については、そのような原価計算が行なわれることが少ないようなのです。

例えば、ある大学が新しい学部を新設する時、同学部を持つ近隣の他大学が幾らの学費に設定しているかを調べ、それらの金額を基に価格を決めるそうです。

大学のコストの大半は人件費と設備費と言われていますが、それにしても利用する側からすれば、コストの根拠についての不透明感は拭えないですよね。

僕たちが日々消耗する日用品とまでいかなくても、もう少し緻密に価格の設定に取り組むべきだと思います。

例えば、大学ごとに第三者機関による事業仕分けのようなものを行なえば、無駄な支出を明らかにすることが出来るのではないでしょうか。

潤沢とは言えないまでも、私立大学には国の補助金(税金)が使われていることは事実なので、納税者である保護者には関心の高い事柄だと思います。

そこで省けた無駄なお金を独自奨学金の財源として使ってもいいでしょう。

話を経験財としての学費に戻します。

今年の8月、アメリカのオバマ大統領は、学費を低く抑えながら質の高い教育を行う大学をランク付けし、順位に応じて公的補助を与える「大学ランキング」の創設を発表しました。

学費は経験財の性格を強く持つので、自ら値下げに踏み切ることが難しい、と先に述べましたが、それであれば、政府の権限で値下げ誘導を図ろうということです。

しかも、ランキング上位の大学へは公的助成をおこなうと、魅力的なアメが用意されています。これは大学側が値下げに取り組む大きなインセンティブとなるでしょう。

現在、文科省では学生の経済支援の在り方が議論されていますが、今回のオバマ大統領の決断に日本も学ぶことがあるのではないかと思います。

カテゴリ:久米忠史コラム|日時:2013年12月03日12:44|コメント(0)

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久米忠史プロフィール

1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。

公式サイト「奨学金なるほど!相談所」

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