2013年12月24日
横浜市が養護施設を退所した若者に給付制の奨学金を支給するという新制度の設立を発表しました。
少し長くなりますが、記事をそのまま引用いたします。
読売新聞WEB版 2013年12月23日の記事より
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養護施設退所者に奨学金…横浜市が全国初
横浜市は、年齢制限に達して児童養護施設を退所する若者を対象に返済不要の奨学金制度を来年度、創設する。大学や専門学校などに進学し、教員免許など就労に必要な資格の取得を目指すことが応募の条件だ。支給額は、学費や就職活動に必要な物品の購入費として一時金30万円、毎月の生活資金3万円で、募集人数は6人程度。市によると、児童養護施設退所者向けの奨学金支援事業は全国で初めて。
市こども家庭課によると、横浜市内には、児童養護施設10か所や、里親の家庭に1~18歳の約600人が暮らしている。児童福祉法では、子供たちは原則18歳を過ぎると、施設を出て行かなければならない。市内の施設では毎年約30人が退所しており、このうち5、6人が大学などへ進学している。
だが、進学した若者の大半は保護者の援助が受けられない。同課によると、家賃や学費、生活費を捻出するためには月約120時間のアルバイトをする必要がある。その結果、学業との両立が困難になるケースが後を絶たず、進学後に無事に卒業できる養護施設退所者の割合はわずかに14%だ。
同課は昨年11月から児童養護施設を出た若者を支援する事業を行っている。日常生活や仕事に関する悩み相談を受け付けているが、経済的な負担に苦しんでいる声が圧倒的に多いという。
市はこうした実態を踏まえ、市民からの寄付による市社会福祉基金を原資に、今回の奨学金制度を創設することにした。
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児童養護施設とは、昔の言葉に言い換えると孤児院です。
しかし、現在の児童養護施設では、親は生きているが育児能力に欠ける家庭の子どもが入所するケースが大半のようです。
僕も今年、沖縄県内の小規模養護施設の里親さんから一人の高校生の進学について相談を受け、彼らが進学することのハードルの高さを感じたことがあります。
20年以上前の古い話ですが、大学を卒業し社会人となった数年間、脱北して中国で暮らす姉弟のひと口里親をしていたことがあります。
僕としては毎月3000円を送金するだけのものでしたが、何度か送られてきたお姉ちゃんからの手紙を読んで恥ずかしくなったことを思い出します。
食糧難で両親が餓死してしまったため、当時中学生だったお姉ちゃんは小学生の弟の手を取り命がけで豆満江を渡り北朝鮮から中国の朝鮮民族地区に逃れたそうです。
そんな大変な境遇を嘆くのではなく、命を長らえたことの喜びと里親への感謝の気持ち、将来の夢について手紙には認められていました。
両親に何不自由なく育てられ、大学まで卒業させてもらったのに好い加減な暮らしをしている自分が恥ずかしくなり涙が溢れました。
記事に書かれている“進学後に無事卒業できる割合が14%しかない”という事実からも、頼る人の少ない若者が大学に進学するだけでも大変なことだと思います。
「格差を生みだすのが教育、しかし、格差を埋めるのも教育」
後者の力を信じ、彼らにはぜひ頑張って欲しいと思います。
今回の横浜市の英断が、他の全国の自治体にも広がっていくことを願っています。
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
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