奨学金なるほど!相談所

久米忠史の奨学金ブログ

2015年02月11日

奨学金で自己破産の記事を読んで

初めて2ヶ月以上もブログの更新を滞らせてしまいました。

昨年末に設立した一般社団法人「まなびシード」の新たな取り組みに忙殺されていたのが一番の理由ですが、もうひとつは奨学金とは関係ありませんが、惨殺されてしまった湯川さん、後藤さんの事件がずっと心に圧し掛かっているいたからです。

昨年、偶然ユーチューブでアメリカ人のジャーナリストが惨殺される動画を観て背筋が凍りましたが、恥かしい話、イスラム国に関しては対岸の火事だと思っていました。不謹慎ですが、全てはアメリカの自欲のせいではないかとも思っていました・・・。

しかし、湯川さんと後藤さんが並び跪かされた映像を観て以来、ネット上に溢れる“自己責任”という言葉に違和感を持ち、やり切れない気持ちが続いています。

権力を持たない個人を誹謗するだけのものは普段から無視していますが、今回の二人の行動に対して「自己責任=自己利益」あるいは「自己責任=自己満足」という捉え方が独り歩きしているように感じています。

それらの考え方を100%否定するつもりはありませんが、個人的には「利他精神=自己責任」という考え方(生き方)もあるのではないかと思います。

今回、ブログを書こうと思ったのは、見過ごしてはならない奨学金に関する報道があったからです。

西日本新聞電子版 2015年2月10日
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奨学金返せず自己破産、小倉北区の40歳フリーター 月収14万円「283万円払えない」

高校、大学時代に借りた奨学金を返還できないとして、北九州市小倉北区のフリーターの男性(40)が福岡地裁小倉支部で自己破産の手続き開始決定を受けたことが分かった。男性には延滞金を含めて約283万円の返還義務があるが、「奨学金のために消費者金融などで借金しても返せない。そもそも多額の金を貸してくれない」と説明。識者は、非正規雇用などで若者の貧困が拡大すれば、今回のように奨学金返還のみでの自己破産申請が増える可能性を指摘している。

 男性は父親が事業に失敗した影響で、1990年の高校入学時から大学卒業まで日本学生支援機構から無利子の奨学金を借りた。高校時は毎月1万1千円、大学時は同4万1千円で、当初の返還期間は93年12月から2012年9月。多いときで年約16万円を返還する計画だった。

 だが、大学3年時に精神疾患を患ったこともあり、大卒後に就職できず、計9万2千円を支払っただけで滞納。アルバイトをして生計を立てる生活で、返還期間の猶予も受けたが、返せなかったという。昨年8月、返還を求めて機構が提訴。同11月、未返還の奨学金と延滞金の計約283万円の支払いを命じられた。

 男性は現在、二つのアルバイトをしており、収入は手取りで月約14万円。光熱費や家賃、家族への仕送りなどを差し引くと、生活費は2万円ほど。貯金はなく、返還のめども立たないことから、自己破産の申請に踏み切った。開始決定は今月4日で、債権者から異議申し立てなどがなければ4月にも破産が決まる。

 学識者や弁護士などでつくる「奨学金問題対策全国会議」(東京都)によると、奨学金返還のために消費者金融から借金するなどして多重債務に陥り自己破産にいたるケースは以前からあったが、最近は奨学金だけで自己破産するケースが出始めているという。
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この男性の大学卒業時は、いわゆる就職氷河期と言われる時代だったのではないでしょうか。

ただでさえ就職が厳しいなかで、精神的な病を抱えているとすると他人には分からない辛さがあったと思います。

記事によれば、返済猶予申請を行っていたようなので、真面目で正直な人柄なのかもしれません。

283万円という金額は、安定した職に就いていれば大したものではないかも知れませんが、不安定な非正規雇用の立場となると途方もない金額に感じることでしょう。

以前の記事で紹介した「大学の実力2015(読売新聞社)」を読むと、今回のケース“40歳でフリーター”は、決してひと事ではないと思います。

Fランク大学に進学したバカな奴が奨学金を滞納している」というコメントがネット上に書き込まれたり、あるいは直接耳にすることもありますが、大学のランクに関わらず生真面目な人ほど追い込まれてしまう可能性があると思います。

現在、日本学生支援機構による財産の差し押さえなどの法的最終措置が取られる事案が年間300件にも上っています。

確かに奨学金は自分の意志で借りるものですし、中には悪質な滞納者もいるでしょうが、奨学金問題を自己責任論だけで片づけてはならないと思います。

大学生の2人にひとりが奨学金を利用しているということは、大学や専門学校の教職員が受け取る給料の半額は、学生の借金(奨学金)で支払われているともいえます。

“奨学金”は学生の責任であると同時に、受け入れ側の教職員の責任でもあります。

給付型奨学金や大学学費の一律無償化議論には個人的には賛成ではありませんが、奨学金の返済に苦しむ人の救済策として「所得連動返済」「債務の消滅期限設定」を早急に整えるべきです。

今回の男性も、時代さえ良ければ正社員就職できた可能性はあったはずです。

自分の身の回りにも、上手く転職できた人がいる一方で、リストラに遭い40代で非正規雇用となった知人もいます。それを自己責任という言葉で片付ける気持ちにはどうしてもなれません。

実社会には、能力の高い人もいれば、不器用でコミュニケーション能力に欠ける人もいます。また、人生には、能力や資質以上に運やタイミングが大きく影響します。

これからは、返済猶予期限が切れた人がたくさん出てくるでしょう。それは、奨学金による自己破産者が増えることを意味します。社会・経済的弱者を救済する制度作りを急いでほしいと願っています。

カテゴリ:奨学金ニュース|日時:2015年02月11日13:17|コメント(0)

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久米忠史プロフィール

1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。

公式サイト「奨学金なるほど!相談所」

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