奨学金なるほど!相談所

久米忠史の奨学金ブログ

2019年06月23日

2020年度スタート!給付型奨学金の拡充と学費の減免措置を詳しく解説

高等教育無償化政策として、2020年度の入学者から新たな給付型奨学金と入学金や授業料などの学費の減免措置が導入されます。対象は住民税非課税とそれに準ずる世帯となっていますが、収入に応じて段階的な支援割合が設けられている点が要注目です。

2017年度の入学者より国による給付型奨学金が始まっていましたが、2020年度からはその内容が一気に拡充されます。さらに、給付型奨学金に加えて大学等の入学金と授業料の減免措置もセットで導入されます。今回は、それらの内容を解説したいと思います。

◆現行の制度と新給付型奨学金との比較

まずは、現行の給付型奨学金と新たに導入される奨学金との違いを見てみましょう。

【現行制度の給付月額】
国公立大学 自宅生(20,000円)自宅外生(30,000円)
私立大学 自宅生(30,000円)自宅外生(40,000円)

【新制度による最大給付月額】
国公立大学 自宅生(29,200円)自宅外生(66,700円)
私立大学 自宅生(38,300円)自宅外生(75,800円)

特に自宅外生に対する給付額が一気に手厚くなっていることがわかります。年額にすると、国公立の自宅外生(800,400円)、私立の自宅外生(909,600円)という支援内容です。

自宅外生を手厚く支援する理由は、新たな給付型奨学金が「生活費支援」に位置付けられているからです。そのため、後に解説しますが、これに加えて学費の減免措置も合わせて始まります。

◆新給付型奨学金の対象条件と段階的支援割合

では、対象となる条件はどうなっているのかを見ていきます。

【新給付型奨学金の成績基準】
以下のいずれかに該当する人
(1)高校の成績が5段階で評定3.5以上
(2)学修意欲のある人

(2)の場合は「高校での面談やレポートの提出により、学習意欲を確認する」となっていますが、あまり悲観的に考える必要はありません。高校の先生の気持ちを考えれば、厳しい家庭を何とか応援したいと思うのも。だから、成績基準は実質無しと考えていいでしょう。

次に肝心の家庭の収入基準を見てみます。

【新給付型奨学金の収入基準】
(1)住民税非課税世帯(満額支援)
(2)それに準ずる世帯(およそ2/3額、1/3額支援)

先の新給付型奨学金の給付月額は、満額支援となる住民税非課税世帯(第1区分)のものです。その他、非課税ではないがそれに準ずる厳しい家庭に対しては、第2区分、第3区分と段階的に分けて支援する内容となっています。

●第1区分(満額支援)の給付月額
先の金額

●第2区分(2/3支援)の給付月額
国公立大学 自宅生(19,500円)自宅外生(44,500円)
私立大学 自宅生(25,600円)自宅外生(50,600円)

●第3区分(1/3支援)の給付月額
国公立大学 自宅生(9,800円)自宅外生(22,300円)
私立大学 自宅生(12,800円)自宅外生(25,300円)

住民税非課税かどうかは保護者も直ぐにわかるでしょうが、気になるのがそれに準ずる世帯です。

日本学生支援機構では、自身の家庭が給付型奨学金の支援対象となるかどうかを確認できるシミュレーターを公開しています。

給付型奨学金の案内書には世帯収入例としていくつかのモデルケースが紹介されていますが、家族構成等により採用されることがあるので、ダメもとでもチェックした方がいいでしょう。
給付型奨学金の支援割合チェック・シミュレーター

◆入学金と授業料の学費減免措置

次に、入学金と授業料の減免措置について見てみましょう。

●授業料等減免の上限額(年額)
【国公立】
大学 入学金(約28万円)授業料(約54万円)
短大 入学金(約17万円)授業料(約39万円)
専門 入学金(約7万円)授業料(約17万円)
【私立】
大学 入学金(約26万円)授業料(約70万円)
短大 入学金(約25万円)授業料(約62万円)
専門 入学金(約16万円)授業料(約59万円)

授業料等の減免額を見るとかなり手厚く、国公立大学ならば実質学費はゼロ円になります。
先の給付型奨学金と合わせると、やり過ぎと言われるほどの支援内容です。

この減免措置は全ての学校が対象になるのではなく、文部科学省が求める一定要件を満たして認定を受けた学校だけに適用されます。

減免措置認定校は2019年の8月頃に公表される予定ですので、志望校が認定校となるかどうかが大きなポイントです。

◆“少子化対策”が今回の給付型奨学金と学費の減免措置の目的

給付型奨学金の拡充と学費の減免措置の導入で、日本の奨学金制度が大きく前進したことは間違いありません。

しかしながら、保護者と受験生、あるいは高校の先生方も、支援内容や採用条件ばかりに目が奪われて、制度の目的までを理解している人はほとんどいないのではないでしょうか。

意外に思われるでしょうが、今回の取り組みの政府の目的は「少子化対策」なのです。

そのため新制度に必要な年間7600億円の財源には、2019年10月からの消費増税の一部が充てられます。

少子化対策ということは、新たに始まる奨学金制度の恩恵を受けた人が、大学や専門学校を卒業して、働き、結婚して、夫婦で2人以上の子どもを持つための施策となります。

その効果が検証できるのが10年、20年以上先の話になりますし、個人的にはかなり無理筋で強引な理由付けだと思っています。

いうまでもなく日本の国家財政は赤字が続き、政府債務は1200兆円を超えています。

現在51歳の僕はまさにバブル世代、僕の両親は高度成長世代。

誤解を恐れずに言うと、個人の能力が高くなくとも、国の成長力のお陰で人生設計ができた最後の世代です。

だから、少なくとも僕はこれからの子どもたちに偉そうに語る資格はありません。

むしろ、自分たちの経験と大学や専門学校の実情を正直に伝えることが子どもたちへの責任ではないかと思っています。

彼ら彼女たちは、超少子化・高齢化社会に進む社会で、個々の能力が求められるシビアな社会を生きていかなくてはなりません。

新制度のツケを次世代、次々世代の子どもたちに背負わせないように頑張って欲しいし、自分も含め教育に関わる全ての大人たちには、それ以上に責任を自覚すべきだと思います。

奨学金アドバイザー・久米忠史

カテゴリ:奨学金ニュース|日時:2019年06月23日07:29|コメント(3)

コメント/トラックバック (3件)

初めまして!サイト検索から御ブログと御サイトを知り、拝見することができました。かゆいところに手の届く情報ばかりで驚いています。JASSOのコールセンターはパンフに掲載されていることしか答えてくれないのだそうです。それならよく読めば理解できるので、なかなか歯がゆいです。と、申しますのも、私は今、母として、JASSOの奨学金の採用について、猛烈に心配していることがあるためです。
私には、現在専門学校在学中(1年生)の娘と高校3年生で私大へ進学希望の息子がいます。専門学校生の娘は2種の貸与奨学金を受けています。
私と夫はしばらくの別居期間を経て、つい最近離婚しました。高3の息子の奨学金については、この状況から、給付・貸与両方の奨学金の予約採用に申し込みしました。専門学校生の娘についても、2年目については新給付型と1種奨学金を申し込んでみようと思っています。JASSOのサイトによると、秋頃には在学中の奨学生にも新給付型の案内があるようだとあったので。心配していることは、収入制限についてです。私は子供の教育資金を何とかしなければと、週休0日のWワークで働いているのでそこそこの収入があります。それでも母子家庭となった今、2人の教育費を抱えながら生活していくことはできないため、子供とも話し合って、奨学金を申し込んでみようと決めたのです。奨学金の審査は前年の所得が対象になるかと思いますが、前年においては、元夫が子の扶養控除などを受けており、私の税控除はほとんどありません。このため、単純にシュミレーターで算出すると、微妙なラインで不可となってしまいます。2020年度の給付奨学金はあきらめるしかないのでしょうか。今年の所得上は、子の扶養控除も私が取るので、2021年度の審査時であれば問題なく受けられるはずですが。
もし、2020年度の給付奨学金が受けられなかったとしたら、2020年度には貸与奨学金を利用し、改めて2021年度給付奨学金に申し込みし直し、貸与奨学金の額を見直す、ということはできるのでしょうか。
この点が心配で、ついコメントさせていただきました。個別ケースについて、いちいちブログやサイトに取り上げることはできないとは存じますが、機会がございましたら、言及してくださると嬉しいです。長文失礼致しました

投稿日時: 2019.08.12@08:20   投稿者: rieyag

専門学校の奨学金事務担当の者です。
奨学金事務担当者の過重労働と言うキーワードでこちらにたどり着きました。
新たな給付奨学金制度はとてもいいと思うのですが、学生支援機構と生徒との間に入る事務担当者の負担は年々大きくなるばかりで、学生向けに説明するには複雑な制度になりすぎて説明に窮し、学生支援機構には問い合わせの電話がつながらず、他の業務も抱えており、本当に辛くて仕方ありません。学内には分かり合える人もおらず、こちらで少し話せる人が見つかればと思いメールしました。
本来のブログの趣旨と違う内容のメールでも申し訳ありません。

投稿日時: 2019.10.24@17:25   投稿者: 匿名

専門学校の奨学金事務担当様

コメント有難うございます。
また、返信が遅くなり誠に申し訳ございませんでした。
奨学金担当者の辛さは大変なものだと思います。
専門学校の奨学金担当と言うことですので。
特に専門学校では学生募集が一番重要とされる部門であり、奨学金担当は日陰になりがちだと思います。
ただ、心ある専門学校の職員の方であれば、本当にこれが学生のためになっているのか? 学校経営を支えるためだけになっていないか? 辛くなってくると思います。
相談者様の答えにならずに申し訳ないですが、学生と保護者、受け入れ側の学校それぞれが、何のための奨学金なのかを考える必要があると考えています。

投稿日時: 2019.12.29@21:48   投稿者: kume

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久米忠史プロフィール

1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。

公式サイト「奨学金なるほど!相談所」

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