奨学金なるほど!相談所

久米忠史の奨学金ブログ

2019年12月29日

2019年を振り返って奨学金を考える

2019年も間もなく終わりを迎えますね。

今年は平成時代の最後の年であり、令和時代の幕開けとなりました。

私的な話としては、父親が2019年10月25日に81歳で亡くなり、
出張の合間に喪主として通夜、葬儀を経験するなど忘れられない年となりました。

宗教、特に葬式仏教を信じていないなか、葬儀会社にお世話になりましたが、
お寺とのやり取りやその金額、1周忌や3回忌の費用を考えると本当に誰のための葬儀なのか大いに疑問を持ちました。

個人的な愚痴ですいません。読み飛ばしてくださいね(笑)。

ここからは真面目に・・・

早いもので、奨学金と関わりはじめて15年が経ちました。

これまでの日本学生支援機構の奨学金の案内書を全て保存していますが、読み返すと、昔の仕組みはかなりシンプルなものでした。

しかし、5年ほど前からは制度変更が毎年続き、今ではかなり複雑な仕組みとなっています。

そこに、2020年度からは高等教育の無償化政策として、給付型奨学金の拡充と学費の減免制度が始まります。そのことにより、さらに複雑な仕組みとなってしまいました。

私は、現在東京に拠点を設けていますが、1年の半分以上は地方に出張しています。
主にお会いするのは、高校教員、受験生の保護者、大学職員の方々です。

仲良くなった方々と酒を飲みながら本音で話す機会が多々ありますが、今回の無償化政策への関心度は、都市部と地方エリアではかなり温度差があることを感じています。

その最大の理由が、無償化の対象となる収入基準です。

今度の無償化の対象となる目安は、4人家族で世帯年収380万円以下です。

これは、地方では決して珍しくない額ですが、賃金の高い東京をはじめとする首都圏では少数派となるはずです。

そのため、無償化政策が「自分ごと」なのか「他人ごと」なのか、太い線が引かれることになります。ただ、都市部であっても、これまで可視化されなかったひとり親で厳しい世帯にとっては大切な制度となるので、都市部の高校や大学職員の方々にも、ぜひ関心を持って対応して頂きたいと思っています。

今回の無償化政策に至った、これまでの流れをざっくりと振り返ります。

2017年、政府が大学無償化について検討開始
安倍政権が掲げる「人づくり革命」の一環として大学等の無償化政策を与党である自民党が検討を始める。
※この年、住民税非課税世帯の子どもに対して給付型奨学金(最大給付額48万円/年)の導入を開始

2019年5月 大学無償化法「高等教育の修学支援制度法案」が成立
同年10月実施の消費増税分を財源に、低所得者世帯を対象にした給付型奨学金と学費減免制度を2020年4月から始まることが決定。
※学費減免(無償化認定校は文科省が掲げる一定の条件を満たす必要がある)

2019年7月~ 高校での日本学生支援機構の予約採用申請開始
例年とは大幅にスケジュールがずれ込み、予約採用の申込み業務が7月~9月となる。
また、これまで年に2回あった募集回数が今年に限っては1回のみとなる。

2019年9月 無償化認定校 公表
いわゆる大学無償化法の対象となる学費(入学金+授業料)の減免対象校が公表。

◆種別/設置数/無償化認定数/無償化認定率(2019年12月20日現在)
国立大学・短大 82校/82校/100%
公立大学・短大 106校/106校/100%
私立大学・短大 897校/866校/96.5%
高等専門学校  57校/57校/100%
私立専門学校  2713校/1689校/62.3%

2019年12月 予約採用の決定通知の告知
7月頃に申請した日本学生支援機構の貸与・給付型奨学金の採用決定通知が例年よりも大幅に遅れることとなった。

【予約採用に関わる高校教員の声】

●当初の案内では12月中に決定通知書が発送されるとなっていたが、12月~1月中旬までにずれ込むとの案内を11月頃に公表。そのため、高校教員は、保護者からの問合せ、クレーム対応に追われる。
●12/13から担当教員はネット上で生徒それぞれの決定結果を確認できることになったが、給付型奨学金における最も重要な採用区分は分からないという不十分な形での告知。
●早いところでは12/23に決定通知書が高校に届く。25日の終業式までに慌ただしく決定通知書を申請した生徒に配布。

取材した限りでは、今年の決定通知書に関する状況は前述のようです。

このブログを見られる日本学生支援機構関係者の方にひとつお伝えしたいのが、昨年マイナンバー関連の受付業務対応で批判が殺到した業者を変更されたことで、今年はストレスが軽減したという高校教員が多くいました。

今でも相談者から批判の多い日本学生支援機構の返還コールセンターもそうですが、入札案件であるため、業者にノウハウが蓄積しづらいという状況を推察します。

日本学生支援機構の年間貸与額が1兆円を超えるということは第二地銀レベルの貸出額に相当します。しかも、全国対応しなくてはならないので、既成のルールに縛られない業者選定が必要ではないかと個人的には感じています。

この点については、あくまでも素人考えなので、そうないかない仕組みとなっているのであればお許しください。

【予約採用に対する受験生の保護者の声】

進学校では最後のセンター試験ということで、浪人忌避現象が起こっています。
国公立第一志望で私立滑り止めの場合、受験校選びが重要ですが、給付型採用者に限ると、自身が受けられる採用区分により選択肢が大きく変わってきます。

ただでさえ、受験シーズンはホテルの宿泊料が値上がりし、個人では予約することさえ難しくなります。

よく講演をさせて頂く沖縄や東北、九州南部エリアならば、第一志望は地元の国立大学で第二志望が首都圏や仙台、福岡の私立大学というケースが多くあります。

日本の受験生全体からすると、地方の進学校の受験生は少数派になるのでしょうが、今年の予約採用のスケジュールの遅れは、当事者にとっては結構影響のあることだと思います。

受験生を持つ保護者にとっては今年だけの話かもしれませんが、高校教員にとっては毎年の話です。多くの高校教員は不安を持っているので、次年度の日本学生支援機構奨学金の予約採用のスケジュールは早めに予定を公表して頂ければと願います。

個人的な話になりますが、2020年1月中旬に4冊目となる著書「奨学金まるわかり読本2020」を発刊させて頂きます。

そこでは、高等教育の無償化政策に加えて、昔と今の進路状況の違いなどを各種データを用いて解説しております。

次のブログでは、それらについて書いてみたいと思います。

皆さまにとって、来年が良い年になりますように。

奨学金アドバイザー 久米忠史

カテゴリ:奨学金ニュース|日時:2019年12月29日20:46|コメント(0)

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久米忠史プロフィール

1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。

公式サイト「奨学金なるほど!相談所」

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