奨学金なるほど!相談所

久米忠史の奨学金ブログ

2020年06月12日

大学無償化政策・修学支援制度の現実的な問題点

緊急事態宣言の解除を受けて世の中は経済問題に関心が移っていますが、各種メディアで報じられているように、現実問題としてこれから可視化されてくるであろう社会・経済面でのコロナショックに向き合わなければなりません。

当方でも3月から7月まで予定されていた89講演が中止になりました。これは6月現在での状況なので、8月以降の仕事にも影響が出る可能性が十分にあると覚悟しています。

また、飲食店などが休業や営業時間を短縮したことで、アルバイト収入が激減した大学生が中退を検討していることなどもメディアで報じられました。そのため、大学が独自に学生への直接支援を打ち出したり、政府でも最大20万円の給付に取り組んでいます。

皮肉なことに、景気が悪化すると奨学金のニーズが高まります。何かと批判の多い日本学生支援機構の奨学金の利用者数は2014年から減少傾向にありましたが、今後再び上昇する可能性が高いと考えます。

混乱のなかスタートした無償化政策

入学式の中止やオンライン授業の切り替えなど混乱が続くなか、この4月から安倍政権の肝いり政策のひとつである「高等教育の修学支援制度」がはじまりました。

これは、住民税非課税やそれに準ずる世帯の子どもに限り、最大年間91万円の給付型奨学金に加えて、入学金26万円、授業料70万円を上限に減免するという内容です。

支援される金額は、第一区分(非課税世帯:満額支援)、第二区分(3分の2の額を支援)、第三区分(3分の1の額を支援)と三段階の支援割合となっています。

例えば、第一区分の採用者が国公立大学に進学すると、入学金と授業料が実質無料となるうえ、自宅生には35万円、自宅外生には80万円の奨学金が毎年給付されます。言うまでもなく給付型奨学金は返済不要の“貰える奨学金”です。

ひと言でいえば、高等教育の修学支援は、厳しい家庭に限定した大学無償化政策です。

入学手続費用が大きな壁となる

大学無償化という言葉がひとり歩きしていますが、現実的に「経済負担が全くなくなる」または「大幅に軽減される」のかというと、そうではありません。

多くの私立大学では、入学金や授業料は合格発表後の2週間以内に納付しなければなりません。

文科省では、全大学に対して修学支援の採用予定者の入学金等の徴収猶予の要請を行っていました。実は、学費の減免は大学にとっては“義務”なのです。つまり、修学支援採用者の学費は必ず減免しなければならないのです。

しかし、その具体的な取り扱い方法は要請止まりで、最終的に各大学の判断に委ねられました。その結果、ほとんどの私立大学では、支援を受けていない学生と同様に入学金と半期分の授業料などの納付が求められたと思われます。

筆者が話を聞いた地方出身の男子大学生は、第一区分に採用され首都圏の私立大学に入学したが、約90万円もの入学手続き費用が必要だったとのこと。彼の場合は、後期分の学費から減免分が差引かれることになるが、これは珍しいことではなく、むしろ大半の私立大学では同様の方式をとっていると思われます。

たとえ一時的と言えども、非課税世帯の保護者が90万円ものお金を用立てることが如何に高いハードルであるかは、少し想像すれば気づくことです。

修学支援の目的が「少子化対策」であることを忘れずに

ほぼ忘れ去られていますが、高等教育の修学支援制度は「少子化対策」としてスタートしました。つまり、保護者が置かれている状況と切り離し、子ども本人が安心して大学等で学べる環境を提供し、社会人として成長してもらうための長期的視点での政策です。

ひとり親世帯での子どもの貧困が、深刻な問題として以前から指摘されています。

高等教育の修学支援も、経済的・社会的な貧困、いわゆる負の連鎖を断ち切るための無償化政策であるはずです。

机の上で計算した無償化ではなく、実際の現場をイメージしてできる限りリアルな金銭負担を最小限に抑えるための追加の施策が必要です。

そのためには、文科省には“要請”ではなくより強いレベルでの対応を求めて欲しいと願いますし、大学に対しては厳しい言い方になりますが、国や自治体が確実に学費を補填してくれるのだから、もっと柔軟に真剣に修学支援制度に取り組む必要があると考えます。

カテゴリ:久米忠史コラム|日時:2020年06月12日11:26|コメント(0)

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久米忠史プロフィール

1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。

公式サイト「奨学金なるほど!相談所」

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