2020年06月28日
慶應義塾大学の教授で社会学者の小熊英二氏の著書「日本社会のしくみ」の序章から。
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2018年6月21日の「日本経済新聞」に、こんな記事が載った。タイトルは「経団連、この恐るべき同質集団」。
その内容は、経団連の正副会長19人の構成を調べたものだ。全員が日本人の男性で、最も若い人が62歳。起業や転職の経験はゼロ。つまり、「年功序列や終身雇用、生え抜き主義といった日本の大企業システムにどっぷりとつかり、そこで成功してきた人たち」だとこの記事は報じている。
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奨学金に関連するところを勉強したいと思い購入し、ブログで書くとしても読了後にすべきですが、この序章の1行目に引き込まれてしまいました。
先の記事では、19人の卒業大学が東大12人、一橋大3人、京大、横浜国立大、慶応大、早稲田大が一人ずつで京大をのぞく全てが首都圏大卒ばかりであることも問題だと指摘しているとのこと。
日経の記事を受けて、小熊氏はさらに踏み込んで次のように指摘しています。
「卒業した大学名は詳細に記されているが、学部や専攻については何も述べていない。学校名は問題だが、何を学んだかは問題ではないのだ」
学歴フィルターという言葉が使われて久しいですが、就職や転職に関わる企業関係者は当然のようにその存在を認めています。
しかし、現実の高校現場に目を向けると、進路指導やキャリア指導では、現実と逆行するように「学生時代に何を学び、気づき、成長したか」が問われると指導していますし、高校に限らず大学でも同様です。
ということは、「高校や大学の教育と指導が社会とずれているのか?」
そうではないはずです。経団連に名を連ねる大企業の社長を務める方はそれは優秀で能力の高い人物だと思われますが、転職や企業経験のない人物がこれからの先の読めない社会の正解を解く参考書の無いなか、次世代、次々世代の人材を育成できる能力があるとは思えないのも正直な感想です。
まだ読了していませんが、小熊氏の「日本社会のしくみ」では、社会学の見地から日本の雇用慣習と教育の仕組みについて、向かうべき方向を示唆してもらえるのではないかと想像しています。
中途半端で答えにもなっていませんが、保護者も子ども本人も高学校歴を目指すのであれば、それを目指して頑張ればいいでしょう。
私は、奨学金アドバイザーとして、主に受験生の保護者に対して講演活動を行っていますが、常に伝えていることが進学は目的ではなく手段に過ぎないということです。さらに、奨学金も進学するための手段に過ぎない。しかも、奨学金を利用するにはメリットとリスクがあるので、その点をキチンと親子で理解して欲しいというスタンスです。
ですので、常に最も気にしているのが“就職(出口)”です。
奨学金の滞納問題を紐解くと、「申込み時」と「就職(出口)」と2つの要因に集約されます。
コロナショックにより、旅行・観光業界では既に新卒採用抑制の動きが報じられています。
2008年のリーマンショック時は、奨学金アドバイザーとして高卒就職できなかった保護者・教員からの相談をいくつも受けました。
現在40代の保護者が経験した就職氷河期が訪れる可能性が十分にあると危惧しています。
就職できない➡進学する➡お金が無いから奨学金を借りる➡卒業しても就職が厳しい➡奨学金返済に行き詰る
このようなマイナス連鎖にならないためにも、奨学金を借りて最短で進学するだけではなく、それ以外の方法もアドバイスできるように努める必要があると心しています。
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
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