2020年07月16日
共同通信 2020年7月14日の報道より
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困窮学生の給付、申請断念相次ぐ 文科省要件が壁
新型コロナウイルスの影響で困窮する学生に10万~20万円の現金を給付する支援策を巡り、文部科学省が示した要件を全て満たさなくても対象になる可能性があることを知らず、申請自体を諦める例が相次いでいることが14日、学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」のインターネット調査で分かった。
文科省は給付対象について、「アルバイト収入が前月比5割以上減」など六つの要件を提示。その上で「全て満たさなくても各校の判断で給付対象になり得る」としているが、FREEは「要件が障害となって申請しなかった学生が多くいる」とし、文科省に周知を求めている。
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新型コロナの影響でアルバイト収入が激減した学生が急増しています。高等教育の無償化を訴える学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」による緊急調査では、中途退学を考えている学生が20%にも上ることがわかり各種メディアで報道されました。
東洋経済オンライン「コロナ休学・退学」に怯える大学生の困窮実態」
そのため、政府では「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』を創設したものの、その政策が上手く実行されていないというのです。
文科省による「学生支援緊急給付金」の公表資料を見てみます。
住民税非課税の学生には20万円、それ以外には10万円を給付するという制度ですが、冒頭の報道によると「対象となる支援要件」が障害となっているとのこと。
その対象要件を順番に見てみましょう。
① 家庭から多額の仕送りを受けていない
② 原則として自宅外で生活をしている(自宅生も可)
③ 生活費・学費に占めるアルバイト収入の割合が高い
④ 家庭の収入減少等により、家庭からの追加的給付が期待できない
⑤ アルバイト収入が大幅に減少していること(▲50%以上)
⑥ 原則として既存制度について以下のいずれかの条件を満たすこと
イ)修学支援新制度の区分Ⅰ(住民税非課税世帯)の受給者(今後申請予定の者を含む。以下同じ)
ロ)修学支援新制度の区分Ⅱ・Ⅲ(住民税非課税世帯に準ずる世帯)の受給者であって、無利子奨学金を限度額(月額5~6万円)まで利用している者(今後利用予定の者を含む。以下同じ)
ハ)世帯所得が新制度の対象外であって、無利子奨学金を限度額まで利用している者
二)要件を満たさないため新制度又は無利子奨学金を利用できないが、民間等を含め申請可能な支援制度を利用している者
この取り組みが公表されたときに、要件の6番の(ハ)(ニ)は人により様々な解釈をするだろうし、「原則として・・・」という文言にも引っかかっていました。
(ハ)の無利子の第一種奨学金には「最高月額」と「その他の月額」と2つに分かれます。
【2020年度予約採用・4人世帯の場合】
●最高月額が利用できる家庭 ➡ 年収686万円以下
●その他の月額が利用できる家庭 ➡ 年収747万円以下
要件(ハ)をそのまま当てはめると、747万円の家庭は「学生支援緊急給付金」の対象外となると読み取れます。
次に要件(ニ)をそのまま読み込むと、年収748万円以上あるため有利子の第二種奨学金を利用している、あるいはその他の貸与型奨学金を利用している学生が対象となる、と理解できます。ということは、年収687万円~747万円の家庭の学生は今回の制度からこぼれ落ちてしまうのか?実際はその他の月額の中での最大額を借りている人も含むのでしょうが、正直分かりづらいですよね。
真面目に考える学生ほど、(ハ)(ニ)の要件に混乱してしまうのではないか。
個人的には43万人に対する530億円という予算から想定しても、アルバイト収入が減少した学生の救済支援と謳いながらも、実は日本学生支援機構奨学金の利用者の中での選別給付となるだろう、と解釈していました。
実際、予算が限られるため、要件を満たす全員採用ではなく、大学側による選別採用となっている状況を指摘する報道を目にしました。
日本学生支援機構の貸与型奨学金の利用者は129万人(2017年度)となっていますが、その利用は大学(37.1%)、短大(44.9%)、専門学校(41.3%)と実は利用していない学生の方が多いのです。
奨学金に頼らずとも学費を負担できる余裕のある家庭もあるでしょうが、中には保護者が教育ローンを借りて学費を賄っている家庭も多くあるはずです。これは学費負担を子どもがするか保護者がするかだけの違いです。
今後、景気の悪化が避けられない中、収入が減少する家庭が増加することは明らかです。
都内で大学生へのアルバイトのマッチングを行っている経営者に聞いたところ、求人数が以前の3割程度まで激減したため売り手市場から買い手市場に逆転しているとのこと。そのため、これまでよりも低い時給でも応募が殺到する状況となっているそうです。
学生の収入減という現象は一時的なものではなく、この後もしばらく続くと思われます。
話が逸れますが、今週、東京女子医大病院がコロナ禍の影響で収入が激減したため、看護師などへのボーナス不支給を決めたという報道がされました。
個人的に気になっているのが、東京女子医大の教職員のボーナスも不支給となったのだろうか、という点です。
もし、大学教職員にはボーナスが支給され、系列病院の従事者だけが不支給というの話であれば、人道的な観点からも問題だと思います。
コロナショックは、広く国民に心身経済的ダメージを与えています。
ドイツでは期間限定で消費税減税を実施するようです。
日本で消費税減税は難しいとしても、コロナ禍をきっかけに大学や専門学校の学費そのものの在り方を考えるきっかけにならないか。
この20年間で日本の勤労世帯の実質賃金が減少を続けているにも関わらず、何故か大学の平均学費は上昇し続けています。
全ての大学や専門学校を無償化することに直ちに賛成の立場ではありませんが、学費の値下げは広く平等に学生や家庭の負担軽減につながります。
非常事態をきっかけに、本格的な学費値下げ論争が巻き起こってくれないかと願っています。
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
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