奨学金なるほど!相談所

久米忠史の奨学金ブログ

2013年10月31日

生活保護費受給家庭と奨学金との話

社会活動家の湯浅誠さんがラジオで語っていた話です。

湯浅さんは貧困や格差をはじめとする様々な社会問題、特に社会の底辺層に視点を置き活動されています。

また、それぞれの問題に対して声高に一方的な主張をされるのではなく、ユーモアも持ちながら冷静かつ誠実に問題解決の道を模索される真面目な人柄だと感じています。

そんな湯浅さんには講演依頼が全国各地から寄せられ、日本中を飛び回っているようです。

湯浅さんは時々、講演の冒頭で次のようなことを聴衆に訊くそうです。

「“うつ病”に悩んでいる知り合いがいる方は手を挙げてください」
「“生活保護”を受けている知り合いがいる方は手を挙げてください」

すると、前者の質問には3~4割の方が手を挙げるのに、後者の質問に手が挙がることがほとんどないとのこと。

湯浅さん曰く、「うつ病患者は現在100万人と言われていますが、生活保護受給者は215万人と、うつ病患者の倍以上居るのにその存在が表に出てこない」

これは、生活保護を受けているということを他人に言い出しにくい社会の風潮が強く影響しているのではないか、とコメントされていました。

実は、僕のところに奨学金相談を寄せられる保護者には、生活保護を受給されている方が多くいます。おそらく全相談者の10%は超えているではないでしょうか。

少なくとも僕が面談も含めてやり取りしたそのような保護者は全て、自分の生き方を反省し、子どもの将来を真剣に考え悩んでいる人たちでした。

生活保護制度は国民を守る最後のセーフティーネットなので、それ自体を恥じる必要はないはずなのに、子を持つ親の気持ちというのはそういうものかもしれませんね。

誰の言葉か忘れましたが、「教育は格差を埋める力を持っているが、一方で格差を作り出すのも教育である」。ギリギリの生活の中で子どもの進学を考える保護者は、教育の前者の力を信じているのだと思います。

ただ、そこで問題になってくるのが子どもの意識と学力です。

国公立大学に進学すれば、経済的に厳しい家庭ほど学費の減免制度を利用することができます。学費の半額が免除されると年間授業料は27万円程度となるので、子どもがアルバイトで稼ぐお金だけでも十分に対応することができるでしょう。

また、難関私立大学ならば、給付型の奨学金制度が充実しているケースが多いので、ある意味選択肢も広がります。

問題は、中下位の私立大学への進学を希望している場合です。

日本学生支援機構の奨学金は、親が余程のお金持ちでない限りは誰でも借りることができます。そういう意味では、間口を広く持ったニーズ型の制度と言えます。

しかし、日本学生支援機構の奨学金は貸与型なので、実質、子どもが背負う借金です。

一方、給付型の奨学金の多くは、成績を重視し、優秀な学生だけをサポートするメリット型の制度となっており、特待生制度などはその典型的なものです。

ひと言でいうと、どれだけ経済的に厳しくても成績さえ優秀ならば、大学へ進学することはできます。しかし、学力の高くない生徒が大学に進学しようとすると、その選択肢は一気に狭まってしまいます。

先日も大学生のお子さんを持つあるお母さんからメールをもらいました。

家計が苦しいので奨学金を生活費に廻し、利息の高い信販系の教育ローンを借りて学費を賄っているが、それも限界に達したの相談内容でした。

子どもが中退してしまうと、奨学金と信販系の教育ローンの負債だけが残ることになってしまいます。

現行の日本の奨学金が貸与型である限りは、奨学金を将来の投資として活かす借金にしなければ意味がありません。

ただでさえ苦しい家計事情に暮らすこの母子にとって、奨学金と教育ローンはさらに負担を増やすだけの結果に終わってしまう可能性が高いと感じました。

「家が裕福でなかったから高校(大学)に行けなかった・・・」 
これは昔ではあたり前のことでした。

個人的な話で恐縮ですが、僕の母親(70歳)は中卒ですが、父親(75歳)は小卒です。父親の時代でも既に中卒は常識だったようですが、貧しい農家であった為、百姓仕事が第一で中学校にはほとんど通えなかったそうです。(これは叔父さんから聞いた話ですが(笑))

今では誰もが大学に進学する時代になりました。
「みんな大学に行ってるからうちの子も・・・」そのように考える保護者も多いでしょう。

「高等教育の無償化」「教育の機会均等」・・・。
これらの理想を掲げ、目指すことには決して反対ではありません。

しかし、それ以上に現実を直視することが重要だと考えています。
そのためには、情報収集力、分析力、計画性が必要となります。

先の母子にとっては、奨学金や教育ローンを無理して借りて進学したことが良かったのか? 

夜間部を目指したり、最低限のお金を貯めてから進学する方法、最後の選択肢として新聞奨学金を検討する道もあったのではないか、など色々思い悩んでしまいます。

極端な話、現在の日本では、奨学金を借りて大学に進学することは簡単です。
しかし、家庭が安定していなければ、奨学金の返済が大きな負担として残されてしまう可能性があることも現実です。

だからこそ、世間がどうあろうとも、自分にとって、お子さんにとって、最短ではなく最良の進学方法を選択することが大切だと思います。

負の連鎖を断ち切り、格差を埋める教育とするためにも、

「なぜ進学するのか」
「どのように進学するのか」
「どこの学校が良いのか」

これらを親子で真剣に話し合うことこそが最も大切な点ではないのか・・・。
今日もいつもと同じ結論に行きついてしまいました。

カテゴリ:時々日記|日時:2013年10月31日19:20|コメント(0)

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久米忠史プロフィール

1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。

公式サイト「奨学金なるほど!相談所」

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