奨学金なるほど!相談所

久米忠史の奨学金ブログ

2012年11月17日

26.6%の大学が給付型の独自奨学金を増やす意向であるが・・・

先日、発表されたリクルート『カレッジマネジメント』と文部科学省科学研究費チームによる共同プロジェクト「奨学金制度に関する学長調査」結果が様々なメディアで取り上げられています。

その中で個人的に気になった点を抜粋しました。(抜粋元:SankeiBiz 2012年11月12日記事より)

■独自の給付型奨学金の有無
「ある」(79.7%)
■現在の自校の授業料水準
「適正」(82.4%)
「高すぎる」(8.5%)(国立:27.6%)。
■今後の授業料水準
「据え置き」(75.7%)
■独自の給付型奨学金の今後の受給総額
「増やす」(26.6%)
「従来通り」(70.1%)
■授業料減免の今後
「増やす」(26.3%)(国立:38.3%)

今回の調査は各大学の学長にお聞きしているようですが、自校の授業料水準について、国公立大学の学長の27.6%が「高すぎる」と感じているのに対して、私立も含めた大学全体では8.5%しか「高すぎる」と感じていないようです。

単純にこの結果を見ると、私立よりもはるかに学費の安い国立大学の方が受験生とその家族の学費負担を深刻に受け止めているように思えます。

価格の決め方は2パターンですよね。
高いサービスの質を提供するために原価から計算するか、市場価格に合わせて原価を調整するかです。

食に例えると、高級料亭では「質」を提供するために、値段が高くても一流の食材を使います。その結果、当然、サービス利用者が支払うお金は高いものとなります。一方、ファミリーレストランならば、主婦・サラリーマン層の財布に合わせた価格をまず設定し、それを実現するための方法を模索します。
ファミレスのランチが安い理由を消費者も当然理解している訳ですから、お互いの利害は一致してトラブルは発生しませんよね。

サービスを提供する側と受ける側の問題が発生するのは、そこに矛盾(嘘)が出たときです。
以前、高級料亭として歴史を持つ某店が、お客の残り物を使い回していることが発覚して廃業に追い込まれました。強すぎる母親と弱すぎる息子(社長)の情けない会見を覚えている人も多いでしょう。また、格安焼き肉チェーンが提供していた生レバーによる死亡事件も同様ですね。

異論を唱える方もいるしょうが、現行の日本では、教育も「サービス」のひとつであると思います。

暴走大臣のお陰で「大学の質」問題に対するマスコミのタブーが薄れつつあります。
週刊誌ではこれまでも特定の大学や専門学校バッシングが行なわれていましたが、おそらくネットメディアを中心にますます激しくなっていくでしょう。

国立大学に比べて国からの補助金が圧倒的に少ない私立大学が独自奨学金を増やそうとすると、その原資を学生が納めた学費から捻出することが一般的です。何度もブログに書いていますが、多くの大学生は奨学金という借金を背負って進学しているのが現実です。

普通に暮らしている保護者が出せるお金の範囲を超えているから、子どもたちが借金をして大学に進学しているのです。
給付制の独自奨学金が増えることは一見素晴らしいことに思えますが、その原資が一般学生の借金であればどう思いますか?

滋賀県のいじめ問題に対する対応を見ても、初等、中等教育を始めとする公務員教員組織の問題点、異常さは多くの国民が認識しています。
そろそろ高等教育の「教育村」の問題点がやり玉にあがる時期に来ているように感じます。

独自奨学金の原資を奨学生が納める学費に求める前に、政府に対して、社会に対して真正面から向き合う姿勢が大切です。
大学の学長自らが、今こそ、受験生、保護者の生の声に耳を傾けることが必要ではないでしょうか。

<昨日の感動>

東北は寒い!! 盛岡駅の陸橋からふと見ると、あれ!富士山!
地元の人に聞くと「岩手山」とのこと。「南部富士」と例えられる見事な姿です。
わずか3日間の東北でしたが、寒風の歓迎を受けて見事に風邪を引きました(笑)。

カテゴリ:時々日記|日時:2012年11月17日19:38|コメント(1)

コメント/トラックバック (1件)

akiraさん
コメント有難うございます。
高等教育の官民格差を是正するための規制緩和が、国公立の学費上昇を促しましたからね。仰る視点は最もだと思います。
教育をサービスに例えるのは、少し乱暴な解釈であると理解したうえで書きました(笑)。
政府の方針を見ると現実的にはかなりハードルは高いのでしょうが、意欲のある人が無理なく進学できるようになればいいですよね。
これからも、どんどんご意見を頂ければ幸いです。

投稿日時: 2012.11.28@19:00   投稿者: kume

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久米忠史プロフィール

1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。

公式サイト「奨学金なるほど!相談所」

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