2019年01月21日
前回のブログでは、奨学金業務に携わる高校教員の過大な負担状況について書きました。
それに対する「匿名希望者」様のコメントを読むと、悲痛な思いが伝わってきます。
これまでも、奨学金業務に関わる高校教員の苦しみが保護者も含めて世の中に伝わることはありませんでした。むしろ、日本学生支援機構の現場担当者として、保護者から批判されるのが日常だと言えるでしょう。
◆日本学生支援機構への不満が高まる高校現場
2017年末にある自治体から、高校教員を対象とした奨学金セミナーの依頼を請けました。
事前に高校教員に要望や質問を募ったところ、日本学生支援機構に対する批判や要望が大半を占め、なかには私を機構の関係者と勘違いしたかなり辛辣な意見もありました。
10年前と比べると、日本学生支援機構の奨学金の仕組みはかなり複雑になっています。
そのため、銀行や保険業界の金融のプロでも全て理解できる人は少数派だと思います。
その申請業務を高校教員が担っていることにそもそもの無理があります。
しかも、奨学金担当教員は日本学生支援機構だけでなく、自治体や民間等その他の奨学金の業務も同時に受け持っているのです。
奨学金制度の第一の問題点は、制度主体側の都合による、いわゆる縦割りの仕組みです。
当然、学生や保護者の理解力や意識はさまざまです。
自分の借金なのだから、案内書をキチンと読み込み理解することは自己責任、という意見がありますが、奨学金に関わる現場を15年見てきた私からすれば、かなり無理があると思っています。
日本学生支援機構の貸与型奨学金が借金である以上、メリットだけでなくリスクも存在します。
本来、それらの説明責任が実施主体側にあることは当然ですが、流れのままに教員に押し付けられているのが実情なのです。
◆担当教員の神経を逆なでする機構の情報公開
日本学生支援機構はHP上で、「奨学金事業への理解を深めていただくために」と題した資料を公開しています。副題が「報道等を見て関心を持たれた皆様に向けたデータ・ファクト集」となっているので、メディアによる批判報道を受けてのものだと思われます。
データ集としては、分かりやすく整理されており、意義ある資料だと思います。
しかし、その中で強く違和感を持ったのが「元奨学生の声」としたページです。
「JASSOには、返還を終えられた元奨学生等から、多くの感謝の声が届いています。」の文章とともに、奨学生からのお礼の手紙やハガキの文面を掲載しています。
これは、データ・ファクト集として必要なものなのでしょうか。
嫌味ではなく、日本学生支援機構バッシングに対する自画自賛の安易な反論に思えました。
おそらく機構の職員のなかにも、私と同様にこのページに違和感を持つ人も居るのではないかと思います。
奨学金業務に振り回され苦労している高校教員からすれば、現場を知らないお役人の言い訳に聞こえ、むしろ腹立たしく感じることでしょう。
◆メディア(世間)ではなく、保護者に向き合ってほしい
しつこいようですが、奨学金の申請業務は、日本学生支援機構とは全く雇用関係のない高校教員が責任を負わされているのが実情です。
奨学金業務の担当教員が腐心している最大要因は保護者対応です。
機構には、メディアに反論する前に現場の声を拾う聴診器を持ってもらいたい。
例えば、予約採用の案内書の冒頭で教員の立場を数行説明するだけでも、状況を理解する保護者が増えると思います。
子どもたちの将来に心を尽くすのは、保護者も教員も同じです。
日本学生支援機構には、教員の負担と保護者の不安を軽減するためにも現場に目を向けてほしいと思います。また、そのことが、機構の信頼につながると思っています。
次回か、近いうちに、スカラシップアドバイザーの問題点を書くつもりです。
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
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