2019年02月07日
2018年より日本学生支援機構では、日本ファイナンシャルプランナー(FP)協会と連携してスカラシップアドバイザーの認定資格者の派遣事業を行っています。
仕組みを単純に解説すると、FP協会の会員に対して「スカラシップアドバイザー」の資格を与えて、高校や大学での説明会に有資格者を派遣するという流れです。
スカラシップアドバイザーとして派遣されると、基本額20,250円と交通費が支給されます。また、昼間は生徒、夜は保護者などダブルヘッダーとなると、最大16,200円が加算され、これらの費用は、いうまでもなく税金で賄われています。
交通費とは別に最高日当36,450円というのは、世間一般の常識からみると、手厚いというか、率直に美味しい待遇ですよね。
◆スカラシップアドバイザー認定レベルへの疑問
スカラシップアドバイザーに認定される前提資格は、日本ファイナンシャル・プランナーズ(FP)協会が認定するCFP認定者若しくはAFP認定者又は一般社団法人金融財政事情研究会ファイナンシャル・プランニング技能士センターの正会員となっています。
カタカナや横文字が多くて、もの凄い難関資格と思うかもしれませんが、いわゆるFP(ファイナンシャルプランナー)ですね。
彼らの中での希望者が、90分程度のセミナーを受講し、奨学金担当教員であれば簡単に分かる程度の試験に合格したのがスカラシップアドバイザーです。
◆ファイナンシャルプランナー(FP)の実情
現在、全国に約3,000名のスカラシップアドバイザーがいます。
2019年度には、さらに500名ほど募集しているので年内には3,500名以上誕生する予定です。全国には約5,000の高校が設置されているので、全ての高校を十分にカバーできる人数ですね。
ただ、いくら人数があろうとも、最も大切な点は、奨学金のプロフェッショナルとしての知識を有しているかどうかであり、その点については当初から甚だ疑問に思っています。
FP資格者の多くは、金融・証券、保険、不動産関係などに本業を持ち、その付加価値として資格をPRしているのが実情です。
そのため、本業に関連するFP知識は強くとも、それ以外の分野に関しては、深い知識がある保証は決して無いということです。
では、当事者である日本学生支援機構では、スカラシップアドバイザーに関してどのように説明しているか、HPでの文面を読むと、
===========================================================================================================
金融的な観点から専門的な知見を有する者を「スカラシップ・アドバイザー」として養成・認定し、全国の高等学校等に対して「奨学金等進学資金ガイダンス」開催に係る募集を行い、申込みのあった学校等に派遣します。
===========================================================================================================
これも“霞が関文学的表現”と言うのでしょうか、ひと言も「奨学金」に関する専門家とは語っていません。
◆講演する者は与え得る影響を与を自覚すべき
言うまでもなく日本学生支援機構の貸与型奨学金は実質学生ローンです。
学生ローンである以上、リスクとリスク対策をキチンと伝えるとともに、奨学金に関する深い知識を持っていなければならないのは当然のことです。
さらには、複雑化した入試制度や現在の大学や受験生の動向など、奨学金と密接に関係する知識も同じように持っていなければニーズに応えることはできません。
なぜならば、高校生の進路選択は、彼らの人生に大きな影響を与えるからです。
残念ながら、現行のスカラシップアドバイザー制度は、“粗製濫造”“仏作って魂入れず”と指摘させて頂きます。
私も含めて講演する立場の者は、生徒や保護者に対する責任を深く肝に銘じて臨むべきです。
「決められたスライドと台本を読むだけでラッキー」
「学校での講演実績で泊をつけたい」
「保護者に知ってもらって本業につなげたい」・・・
このような低俗で舐めた考えを持つ人は、スカラシップアドバイザーになるべきではありません。また、講演者は、お金を戴く機構側におもねることなく、生徒・保護者の立場で発言するべきです。
◆スカラシップアドバイザー制度創設との因縁
実は、スカラシップアドバイザーの創設については、個人的に因縁があります。
今から6年程前、日本学生支援機構の幹部から、現場から見える問題点などの意見を聞かせて欲しい、との連絡を受けました。
そのことについて、書くべきではないかと思い始めています。
久米忠史プロフィール
1968年生まれ 東京都在住
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。
公式サイト「奨学金なるほど!相談所」
最新記事
月間アーカイブ
コメント/トラックバック (3件)
FPです。私もスカラシップアドバイザー制度には疑問を抱いている内の一人です。実際に奨学金を借りて返済に苦労した人間として、奨学金の実態を伝える内容になっていないことにがっかりしております。創設との因縁、ぜひ記事にしてください!
投稿日時: 2019.02.20@09:14 投稿者: ハチママ
FPであり、スカラシップアドヴァイザーです。先日、資格更改プログラムを受講しました。ご指摘のことは少なくない方から指摘されているようで、プログラムにも反映されていました。実は、スカラシップアドヴァイザー制度についてFPの勉強会の講師を頼まれています。先生のこのブログを勉強会で紹介したいのですが、よろしいでしょうか。
投稿日時: 2019.08.5@14:45 投稿者: 匿名希望
匿名希望様
8月にコメント頂いていながら、返信できずに申し訳ございませんでした。
ぜひご活用下さいませ。
2020年1月に発売する「奨学金まるわかり読本2020」では、スカラシップアドバイザーが出来るきっかけになった経緯も書いています。
おそらく日本学生支援機構の上級職員の方々は嫌がると思いますが、これは事実です。心あるスカラシップアドバイザーの方々とは是非交流させて頂きたく思っております!
投稿日時: 2019.12.29@20:51 投稿者: kume
コメントする