ここでは日本学生支援機構を中心に、奨学金のポイントと注意点について説明します。
パンフレットやホームページなどで見落としがちな意外な"落とし穴"もあるので、奨学金の利用を考えている人は必ずチェックしてください。
1予約採用と在学採用の違いを理解する
日本学生支援機構の貸与・給付奨学金を申込むには、高校3年生の段階で申請する「予約採用」と 大学等進学後に申請する「在学採用」の2つの方法があり、現在では多くの学生が予約採用で申し込んでいます。
予約採用のメリットと注意点
予約採用のメリット
予約採用と在学採用の違いとそれぞれのメリットと注意点を理解することが大切です。
予約採用のメリット1
予約採用、在学採用ともに年間の支給額は同じですが、在学採用よりも予約採用のほうが初回の振込み時期が早くなります。 机の上での計算上でいくら数字が合っていたとしても実際にお金を手にしているかどうかが重要です。 特に入学初年度は何かと物入りなので、奨学金が早く支給されるほうが安心でしょう。
予約採用のメリット2
予約採用で申し込んだほとんどの選択項目は、入学直後に行う「進学届」提出時に変更可能なので、 具体的な進路が決まっていなくても安心して申し込んでいいでしょう。
予約採用のメリット3
予約採用で奨学金を申込んだが、最終的に必要ないと判断すればキャンセルすることができます。
キャンセルするための特別な手続きは必要ありません。
「進学届」を行わなければ自動的にキャンセルしたことになり、何かしらのペナルティーが課される訳でもありません。
したがって、多少でも必要となる可能性があるならば、予約採用で奨学金を申し込んでいたほうがいいと思います。
予約採用(2023年度の場合)
募集 | 予約採用 | 採用決定通知 |
---|---|---|
1回目 | 4月~5月 | 10月 |
2回目 | 6月 | 11月 |
3回目 | 7月 | 12月 |
予約採用の注意点 ~募集回数・締切日は高校ごとに異なる~
予約採用の募集に関しては、日本学生支援機構がそれぞれの高校に一任しています。 そのため、募集回収や締切時期は高校ごとに異なると理解してください。 高校はキチンと案内しているにも関わらず、肝心の子ども本人が話を聞いていない、書類を持って帰らないという話を毎年聞きます。 したがって、奨学金を利用するのであれば、子ども本人が当事者意識を持って臨むことが大切です。
在学採用のメリットと注意点
在学採用のメリット
予約採用では、進路に関わらず成績基準と家庭の収入基準が一律となっています。 一方、在学採用では「学校種別」「通学環境」により成績と収入基準が異なります。 さらに、在学採用ではお子さん本人の進学後の授業料が収入から特別控除されます。 そのため、予約採用では収入基準がオーバーしてしまった家庭でも在学採用で収入基準をクリアできる可能性があります。
在学採用の注意点 ~高校とは違って大学では大人扱いされる~
高校の先生は親切です。なぜなら、生徒を子どもだと思っているからです。一方、大学ではどうでしょうか。在学採用の説明会でも学内に告知ポスターが掲示されているだけかもしれません。 せっかくの募集案内を見逃すと奨学金の申請機会を来年まで待たなければなりません。 高校までとは違って、大学では学生を大人扱いします。 情報に対して受け身でいるのではなく、自分にとって大切な情報を見逃すことのないように意識してください。
2入学時特別増額貸与奨学金も併せて申し込もう!!
入学初年度は入学金や生活の準備費用などが必要なため、2年次以降よりもお金がかかります。 そこで、入学初年度(編入学の場合は入学年次)のみ、 50万円を上限に一時金を貸し付ける制度が入学時特別増額貸与奨学金です。
入学時特別増額貸与奨学金も進学後の支給となっていますが、この奨学金と連動した労働金庫の 「入学時必要資金融資」という特殊な前借り制度を利用して前もってお金を借りる方法があります。
また、進学後の最終手続き時に、入学時特別増額貸与奨学金だけを辞退することができるので、 第一種、第二種奨学金と併せて申し込んでおくことをオススメします。
3第一種奨学金にこだわり過ぎないように!!
お金を借りるのなら無利子の方が良いに決まっています。 まして進学のための奨学金であれば、なお更そう思うはずです。
ところが、日本学生支援機構が発足した2004年からの「無利子」「有利子」の事業規模を見ると、無利子よりも有利子の方が貸与額も利用者数も多く推移しています。 その理由のひとつに、無利子の第一種奨学金では貸与月額が最大64000円(私立大学・自宅外生)と限られている点があると思います。 そのため、仕方なく有利子を選択している学生が多いのでしょう。
ただ、一般のローンとは異なり、有利子奨学金は在学中には利息が発生しません。
利息が発生するのは卒業後に返済が始まってからです。
しかも、奨学金の上限利率は3%を超えることがありません。
したがって、あまり無利子にこだわり過ぎず、有利子も含めて費用対策を行うほうが現実的かもしれません。
4奨学金の支給開始時期に注意しよう!!
奨学金の大きな落とし穴とも言えるのが、支給開始の時期です。
「予約採用」「在学採用」ともに、奨学金の支給が始まるのは進学後となっています。
つまり、入学金・前期分授業料などの入学手続き費用を奨学金でまかなうことは出来ないのです。
多くの学校では入学手続き費用の納付期限を合格発表後の1~2週間以内としています。AOや推薦入試などで早い時期に合格した場合、それだけ早くお金が必要となるのです。
そこで有効な手段となるのが教育ローンです。入学手続き費用については、早めに親子で相談していくことが大切です。
学費の納付期限と奨学金支給日をキチンと整理!
大学や専門学校では1年を前期と後期の2期に分け、授業料は各期の最初の月に一括納付としているのが一般的です。 それに対して奨学金は一括ではなく、毎月一定額が振り込まれる仕組みになっているので、 奨学金の振込日(入金日)、学費の納付期限などをカレンダーに整理しておくといいでしょう。
期の区分 | 学費の納付月 | |
---|---|---|
前期 | 4/1~9/30 | 後期の終わり、または前期の初め |
後期 | 10/1~3/31 | 前期の終わり、または後期の初め |
奨学金入金日 | 振込日は原則毎月11日です。 |