修学支援新制度の対象拡充
~第4区分の創設~
2024年度から、高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金+学費減免)では、新たに第4区分が創設されて支援対象が広がります。世帯年収600万円程度のいわゆる中間所得層までが対象になるというものですが、中間所得層全世帯ではなく、3人以上扶養する子どもがいる世帯、または私立の理工農系分野に進学する世帯に限られます。学費の支援拡充は有難いことですが、より複雑な仕組みになったので、これまで以上に丁寧な説明が求められると思います。
第4区分の対象となる世帯年収の目安
文部科学省が公表している世帯年収の目安です。 報道等では年収600万円という数字が先走りしている感がありますが、家族構成によって740万円程度まで幅があることがわかります。
昔の日本学生支援機構奨学金の家計基準は、両親いずれか一方の収入だけで審査されていましたが、現在では世帯年収(厳密に言うと両親と本人の住民税情報)で判定されます。
共働き世帯が7割を超える現在、大都市圏では世帯年収600万円は中間所得層ではない、という声をよく耳にします。確かにそうかもしれませんが、地方では中間所得層どころか上位層に該当する地域も多いと思います。
また、大都市圏でもシングルマザー家庭などは第4区分の創設で救われるケースが多いのではないかと思います。
第4区分の支援内容
多子世帯は給付型奨学金と学費減免の両方の1/4支援が受けられます。
いっぽう、私立理工農系の学生は、給付型奨学金の支給はなく、文系との差額分の学費減免支援のみが受けられるというかたちです。
多子世帯で私立理工農系進学者の場合は、多子世帯の支援内容が適用されます。
第4区分の支援額(年額)
多子世帯とは?
扶養する子どもが3人以上いる世帯が多子世帯と判断されます。そのため、大学を卒業して就職し扶養を外れた、または高卒で就職して扶養から外れたという兄妹は多子世帯のカウントからは外れます。
統計によると2021年度の多子世帯割合は17.7%に過ぎないため、大半の家庭は対象外となります。その点については批判の声の方が多いようですが、該当する家庭にとっては非常に有難い経済支援制度と言えるでしょう。
私立の理工農系の認定とは?
高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金+学費減免)は、一定要件を満たして国や自治体から認定を受けた大学や専門学校に進学することが条件になります。
つまり、認定外の学校に進学すると、学生側が修学支援新制度の要件を満たしていても支援が受けられないということです。
第4区分として取り扱われる「私立理工農系」分野は学校ではなく、「学部・学科」単位での認定となるので、志望校の学部学科が認定を受けているかどうかの確認を忘れないでください。
多子世帯への支援がさらに拡充される
(2025年度から予定)
高等教育の修学支援新制度は少子化対策の一環として創設されました。前述したように2024年度からは第4区分が新たに設けられ、多子世帯と私立理工農系の中間所得層への支援が始まります。
さらに、2025年度からは所得制限を設けずに多子世帯へのさらなる支援拡充が予定されています。
2025年度からの支援内容(予定)
対象 | 3人以上子どもを扶養する多子世帯 |
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所得制限 | 無し ※多子世帯全員 |
支援内容 | 入学金と授業料の減免支援 |
支援額 | 現行の第1区分(満額支援)と同額 |
所得制限を設けずに多子世帯への支援が行われることが衝撃です。国公立なら実質無償、私立大学でも毎年70万円の授業料減免が受けられるというのは、当事者にとってはもの凄く有難い支援策だと思います。これまでの経緯を見ると、世論は批判の声の方が多いと思うので、今後の政府の対応を見守りたいと思います。
まとめ ~地方への配慮を期待~
1943年の大日本育英会の創設以来、貸与型のみで運営されてきた国の奨学金事業が、給付型に舵を切った意味は大きいと感じています。 奨学金事業に関しては、国は多子世帯支援に重点を絞ったようですが、そのほかの世帯にも支援が広がる可能性があると信じたいです。
ただ一方では、修学支援新制度の認定が取り消される大学や大学、専門学校が出てきています。少子化が進むなか、高等教育機関も含めた教育業界全体が経営的に苦しくなるのは必然です。
教育の質が低いと評価される大学や専門学校が淘汰されることは歓迎しますが、立地条件だけで地方の大学などは大都市圏の大学と比べて大きなハンディを背負っています。 地方創生、東京を代表に都市部への一極集中問題を改善するためには、もう一歩踏み込んだ取り組みが必要だと思います。