日本学生支援機構の奨学金は実質学生ローンですが、返済が苦しくなった人のために3種類の救済制度が用意されています。
これは学生ローンといいながらも、一般のローンとの大きな違いといえます。
ただし、これらの救済制度も自己申請が前提となるので、奨学金を借りる段階から内容をキチンと理解しておくことが大切です。
1返還期限猶予
返済を待ってもらう制度。
適用期間:最長10年間
適用条件: 給与所得者(年収300万円以下)、給与所得以外の者(年間所得200万円以下)
2減額返還
返済月額を1/2、または1/3に減額してもらう制度。
適用期間:最長15年間
適用条件:給与所得者(年収325万円以下)、給与所得以外の者(年間所得225万円以下)
救済制度の新規認定状況
日本学生支援機構では、「業務実績等報告書」として毎年各年度の取り組みや結果詳細を公表しています。当報告書のなかから、救済制度の新規適用件数の推移を見てみます。
項目 | 令和元年度 (2019年度) |
令和2年度 (2020年度) |
令和3年度 (2021年度) |
---|---|---|---|
減額返還 (1/2返還) |
11,489件 | 11,607件 | 11,776件 |
減額返還 (1/3返還) |
19,413件 | 22,217件 | 24,418件 |
返還期限猶予 (一般) |
150,169件 | 159,134件 | 145,005件 |
出所:日本学生支援機構「業務実績等報告書」から筆者作成
これを見ると、1/2返還はほとんど変わりませんが、1/3返還の適用者が年々増加していることがわかります。「半額を返済するのは無理だが、1/3なら何とか返済できる・・・」 実際に奨学金を返済している人の苦しい日々が想像されます。
日本学生支援機構奨学金の救済制度は抜本的な解決策ではなく、時間的猶予が与えられるというものでしかありません。これは日本学生支援機構の問題というよりも、国、大学、企業それぞれが当事者意識を持ったうえで向き合わなければならない課題だと思います。
収入が適用条件を超えている場合は控除条件をチェック!
救済制度の収入基準をオーバーしていても以下の内容は特別な支出とみなされ収入から控除されます。
<控除される支出要件>
・被扶養者がいる場合
・親や親族へ生活費援助をしている場合
・本人の医療費
・被扶養者の医療費
・災害被害に遭遇した住居取得費、修理費、車・家財購入費など
猶予が認められると延滞金と利息も免除される!
返済猶予が認められると毎月の返済が一旦ストップされるだけでなく、猶予期間中の利息も延滞金も免除されます。
返済猶予は自己申請が前提!
各種猶予制度は自己申請が前提です。
どれだけ経済的に厳しい状況にあったとしても放っておくと、悪質滞納者と見做されて、延滞金やブラックリスト登録などのリスクを負うことになります。
厳しい状況に陥ったらすぐに猶予申請をおこなうように注意してください。
既に延滞していても返済猶予申請ができる!
平成26年4月から、既に延滞している人に対しても、延滞期間中の収入証明書等を提出することで、遡って「返還期限猶予」を申請できるようになりました。 しかし、収入基準の厳しさや必要書類を用意する難しさなどから決して万全の策とはいえませんが、 既に延滞している場合は、諦めるまえに猶予申請の相談をすることをオススメします。
返済猶予であって、返済免除ではない!
日本学生支援機構の返済猶予制度は"一定期間返済を待ってもらえる"だけであり、決して返済が免除されるわけではありません。 したがって、抜本的な解決策ではなく、あくまでも生活を立て直すための猶予期間に過ぎないということを理解してください。