【vol.005】 久米忠史の奨学金コラム [2010.11.21]
奨学金制度の転換期?
このところ奨学金に関する記事をよく目にしませんか?
少し古いですが、8月29日の共同通信による記事から抜粋。
~申請者全員に無利子奨学金 文科省方針、2万6千人増~
文部科学省は29日、所管の独立行政法人「日本学生支援機構」が大学生らに貸与する無利子奨学金の2011年度の対象者を、本年度より約2万6千人増やし、基準を満たす学生が申請すれば全員が受けられるようにする方針を決めた。有利子奨学金の対象も約8万人増やす。
続いて、同じく共同通信が9月25日に配信した記事。
~文科省、ボランティア経験を加味 大学生ら無利子奨学金~
文部科学省は24日、所管の独立行政法人「日本学生支援機構」が大学生らに貸与する無利子奨学金の審査基準について、現行の世帯所得や学業成績のほかに、来年度からボランティアの経験も加味する方針を決めた。~中略~ 所得が基準を上回ったり、成績が下回ったりした場合は受けられないが、ボランティアをすれば基準外でも“救済”される可能性が出てくる。ボランティアを申請の条件にはしない。授業料減免制度でも国公立大を中心にボランティア経験の適用を求める方針で、今後、中教審大学分科会で具体案を論議する。減免の基準に追加した大学には、私立大も含めて国の補助金増額を検討するという。
文部科学省も日本学生支援機構も、このままではいけないという危機感は持っているのでしょう。
しかし、2万6千人分増やせば、無利子の志望者全員に行き渡るかどうかは疑問です。
というのも、成績基準を満たしていても「どうせ採用されないだろう」と考えて申請しない人や「第一種の金額では必要な学費を賄えない」ので、敢えて第二種のみを申請する人が少なからず居ると思うからです。
また、ボランティア経験が奨学生として採用される際の材料となるというのも如何なものかと思います。ボランティアとは本来「無償」「利他的」なものであり、何か金銭的メリットを得るための手段ではないはずです。
ボランティア活動自体は素晴らしい社会活動だと思うので、もう少し柔軟に考えて、学生=学校=社会の3者にも役立つ仕組みを作れないかと思います。
例えば、ボランティア経験を採用材料にするのではなく、成績基準を満たしていない人でも大学や専門学校の卒業までに200時間のボランティア活動を“義務化”するなどすればどうでしょうか。
ボランティア対象は学生本人が探してきても良いですし、学校が窓口となって人材が不足している福祉分野などへ学生を斡旋するなどすれば、人材の交流が活発化し業界が活性化する可能性もあります。
ボランティア義務を放棄した学生は「無利子」の権利が喪失し、卒業後、有利子で返還する形にすれば自己責任の範疇で収まる話だと思います。
はっきりと言えることは、今、奨学金制度の転換期に入っているということでしょう。
しかし、問題の本質は日本の奨学金制度は“奨学金と名を借りた教育ローン”であることだと思っています。大学・専門学校への進学率が80%にせまる日本では、奨学金の問題はもっともっと大きくなるはずです。
次回は、就職難と奨学金と返還に関する実態に触れてみたいと思います。