【vol.018】 久米忠史の奨学金コラム [2012.08.10]
地方自治体も滞納問題に悩む
2012年6月28日 岐阜新聞Webより
~県の奨学金、滞納最多 就職難で?昨年度末に7千万円超~
経済的な理由で修学が困難な高校生らに無利息で貸し付ける県(岐阜県※筆者注)の奨学金制度で、県教育委員会は27日、昨年度末時点の返済金滞納額が前年同期比18.4%増の7780万円で、過去最多となったことを明らかにした。
2012年7月25日 さんようタウンナビより
~奨学金返済滞納1億円超す 岡山県育英会~
県内(岡山県※筆者注)の高校生と高等専門学校生に無利子で貸し付けている県育英会の奨学金で、返済の累積滞納額が1億円を突破したことが分かった。
24日に岡山市内で開かれた同会の理事会で、2011年度末の額が1億1013万円と報告された。
前年度からの増加幅は4年ぶりに1000万円を超え、同会は景気低迷による就職難などが要因とみている。
現在、日本学生支援機構奨学金の滞納問題がクローズアップされていますが、各都道府県が行っている高校生向けの奨学金でも、同じく滞納が問題となっているようです。
国の奨学金も地方自治体の奨学金も借主は学生自身です。 滞納問題の背景には就職環境の厳しさがあるのでしょうが、高校生向けの奨学金については少し異なる事情があるように感じます。
奨学金を滞納した方からもメールや電話で相談を受けることがありますが、高校時代の奨学金については本人が借りていた事実を知らないケースが多いように思います。
というのも、高校生向けの奨学金は、保護者が全て手続を行うことが一般的です。そのため、学生自身に奨学金を借りたという自覚がないために、返済の督促書類なども安易に考えて放って置くケースが見受けられるのです。
親の意識の低さ、親子のコミュニケーション不足。
厳しい言い方ですが、親子ともに社会人としての躾ができていないのでしょう。
実は日本学生支援機構の奨学金でも同じ現象が起こっている可能性があります。
先日、某大学の奨学金担当者から興味深い話を聞きました。
同じ日本学生支援機構の奨学金を利用しているにも関わらず、予約採用で申込んだ学生と在学採用で申込んだ学生とでは、その後の生活態度に格差があるように感じるとのこと。
例えば、奨学金の継続手続ひとつをとっても、在学採用の学生は比較的キチンと期日を守るのに対して、予約採用の学生はルーズなことが多いそうです。
これは、予約採用の利用者は、「みんな申込んでいるから」とか「先生が言っているから」などと、高校時代に受動的な姿勢で何となく申込んでしまっている人が多いからではないかと推測しています。
奨学金は、学生が背負う大きな借金であることは間違いありません。 そのためにも、奨学金の「借り方」だけでなく、「返していく」ことをキチンと伝えていくことが重要です。
現在、高校在学中に申込む予約採用の割合が急増しています。
この現実を考えると、奨学金への取り組みひとつをとっても、高校現場の役割は益々大きくなっていると言えます。
しかしながら、キャパシティオーバーの過剰な業務を抱える教員の日常、保護者対応など、やる気のある教員ほど一杯いっぱいの状態です。 また、公務員という身分上、民間企業の厳しさ、社会の常識・非常識を理解して実践教育していくことはかなり困難なことでしょう。
だからこそ、社会をよく知る民間人を積極的に活用していくことが重要でしょうし、その方が、結果的には学校現場の質の向上につながると考えます。